茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(202)「それ、流行ってるんですか?」

三月×日(土)
  アルバイトだけでは辛いので、仕事が流れた日や土曜に前に働いていた会社で日雇派遣に出ることにした。つまりまた都内である。拘束時間や日当を考えるとこうなる。週に一回もないんだから、と必死に言い訳をする。だから今日は久しぶりで看板に偽りはない、ほんとの日雇派遣日記である。つくばで仕事が終わってからでは間に合うか怪しいので休みと言われる日を待って、都内に出て映画見て会社指定の診療所で健康診断受けた。ちなみに血圧計は最低が七十、最高が百十である。ゼネコン現場が多いので健康診断を受けていないと入れないのだ。ほぼ三年振りなので仕事の入れ方も忘れていた。
現場は都内ターミナル駅目の前の高層ビル。本体は完成し、テナントを入れる二期工事をしているらしい。集合が駅改札に七時十分、大きな駅で改札がいくつもあり迷うと困るので少し余裕を持たせたらみらい平発が五時四十四分。座れるけど早起きだな。都内に現場仕事で通うってのはこういうことだよ。養生・クリーニングのR社の仕事で、集合場所にはR社の職人が拾いに来た。派遣会社からは僕の他にもう一人、十歳以上上の人が来ている。
  朝礼前の七時半から新規入場者教育を受ける。取り立てて他の現場と変わったルールはない。作業員詰所も現場事務所も同じフロアにまとめられているから新規を受けるのは詰所から事務所への移動だけ。規模が小さい現場なら詰所と事務所の区別はないがこの現場は大きいので事務所も建設ゼネコン、電気、設備と分かれている。通常新規は建設ゼネコンがまとめてやってて、ここもそうだった。で、詰所のある十一階から地下二階段へ移動して朝礼。ラジオ体操と監督からの注意事項、新規入場者あいさつ、決まった流れである。本当に大きい現場になると朝礼は平気で三十分を越え、一時間近いところもある。監督からの、あるいは各職長からの注意、伝達事項だけでも優に二十人以上が入れ替わり喋る上に延々新規入場者のあいさつが続くのだ。会社ごとの新規入場者のあいさつなんて、前に出て名乗るだけ。名乗ったら拍手で迎えるという気持ち悪いものである。前に出なくていいと職長に言われていたので安心したよ。
  作業場所は非常階段だった。地下二階から一階に移動、さらに横に動いて非常階段にたどり着く。ややこしくて建物の構造を、というより詰所から作業場所への道のりを覚えられない。事実この日遭難して文句を言いながら歩き回ってる職人を何人も見ている。作業内容は四人で四階から一階までの、完全に仕上がった(一期工事で完成している)非常階段の床面にこぼれた糊の掃除だと言う。ちょっとハードです、とは職長の弁。ボンドがこぼれたりしているので、他の汚れは気にせずそれをスコッチやスクレーパーを使って落とせ、ということだ。スコッチは、台所で使うスポンジの着いてるあれだ。現場ではスポンジは着いてないけどな。スクレーパーはカッターの刃のついたケレン道具。振り回せば凶器である。復帰第一戦はこれですか。非常階段と言ったって、ビルの裏の狭い奴じゃない、人が十人横に並んでもぶつからないような奴だ。これは確かにハードだ。結局丸一日ノルマに追われながら腰をかがめてスコッチでボンドをこすってた。もちろん僕の嫌いな作業である。いやー、一日が長かったこと!
  夕方、派遣会社にその日の給料を取り行った。事務所は移転していて僕は場所を知らなかったので今日の同僚に連れて行ってもらった。基本給八千五百円に交通費が千円までは自腹でそれを越えた分の千六十円、そこから源泉徴収で百九十円引かれて九千三百七十円が今日の収入だ。額だけ見ればつくばのバイトとあまり変わらない。はあ〜。久し振りで顔を見た会社のスタッフから「なんだ下駄じゃないんだ」と言われて憤慨した。もう若くないんじゃあ!
  さて、詰所で昼休みに本を読んでた時のこと。詰所は椅子と机があるものの座ると後ろの椅子とぶつかってしまう。机に突っ伏して寝ることも出来ない。もう少しなんとかならんのかとみんなが思ってるだろう。弁当食べて、『クリスチャン女性の生活史』を読んでいた。春までお休みの『戦時下抵抗の研究』読書会の関係で読んでいるのだが、それを見た日雇派遣の同僚が聞いて来た。「それ、流行ってるんですか?」僕の中ではマイブームかもしれないが流行ってる訳がない。それに流行りの本を読む趣味も時間もないよ。首を振ったが考えてみたら本なんて何をきっかけに売れるかわからない。「今すんごく読まれてますよ!」と答えとくべきだったかな。