茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(231)秋の長雨

加藤匡通
十一月×日(水)
   日雇派遣に復帰してから、ほぼ同じ現場に通い続けている。例の公共施設だ。復帰してから週三日から五日働いている。財布の具合からすれば五日出ていないとまずいんだが、いろいろと用が出来ては休んでいる。休む時は「こういう時に運動を優先するために日雇派遣に戻りました!」と格好つけているが、嘘ではない。ま、でも早めに地元の仕事に移りたいけど。
   派遣会社に給料取りに行ったら当然のように知った顔に合い、「戻ってくんなよ」と笑われた。まったくだ。しかも今年二回目だからな。言った当人はもう十年、その会社で日雇派遣を続けている。僕と同じ頃にその会社に登録して働き出した人たちはみな十年選手だが、この春復帰した時に、案外知った顔が残っていてしかもその多くが十年選手と聞いて驚いた。都内にいれば、僕もその会社で十年目をむかえていた可能性は高い。交通費もそれほどかからず、自動車の維持を考えなくていい都内なら日雇派遣だってまあまあやって行ける。
   作業は型枠大工の手元だから大工が作業している階かその下のコン打ちがすんで型枠をばらしている階が主となる。復帰してからは雨続きで、合羽と長靴が手放せない。雨はやんでいても足元は水たまりだらけなので長靴は何日も履きっ放し、安全靴はもう履かないだろうと持って帰ってしまった。サポートが立ち並ぶ薄暗い中、天井からは前日の雨が、足下の水たまりへと滴っている。時折日が差してくるこの光景は、どこかで見た覚えがある。何だっけと端角を担ぎながら考えて、しばらくして思い出した。タルコフスキーだ!あはは、そんなものを思い出すとは。今や全ての屋外作業は被曝労働と言えなくもないので、東京だって薄い「ゾーン」と言える。もちろんそんなことを考えて思い出した訳じゃない