茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(284)本気のエレベーター養生で足手まとい

加藤匡通
十一月×日(月)
  今日は呪わしい天皇制の記念日で休日。「文化の日」は日本国憲法公布した日とされているがそもそもは明治天皇ムツヒトの誕生日で祝日とされていた日である。このように現在の休日の大半が天皇制に起源を持っている。勤労感謝の日なんてそもそもは秋の収穫を祝う皇室行事新嘗祭だからな。働くことへの感謝とか関係ない訳で。実に腹立たしい。が、今日は僕にとっては最初の『ゴジラ』公開記念日なので、世間とは異なった意味で祝うべき日だ。多分、世界中で祝われている。…今日が何の日でも賃労働をしていることに変わりはないな。
   初めての現場でゴミ出しがあるからといきなり一時間早出。九階建ての小振りなビルの新築工事だ。都内、JR駅前で人通りも多い。警備員より早く着いたので七時前の現場には誰もおらず真っ白な仮囲いフェンスの前で立ち尽くすことしばし。七時前に現れた警備員によれば近くに詰所があって、そこから来たとか。何で詰所の情報が入ってないのだ?
  休日なのでゴミ車は八時にならないと来ない。それまでゆっくり養生クリーニングのN社の職人と現場前の歩道にゴミを出している。ある程度歩道に貯まったら通行の邪魔になるので中断する。人の背丈ほどあったゴミの山は一回りも小さくなってはいない。でも急いでないみたいだからいいか。いや、ならなんで早出なんだ?それでもゴミ出しは九時半には終わって長目の休憩に入り、現場の外の詰所へ移動する。
   今日のメインは養生と会社から聞いてはいたが、詳しくは聞いていなかった。なんとエレベーター養生、それもスタイロベニヤを加工する本格的なものだと言う。さらに午後の早い時間まではエレベーター屋が検査をしているので養生を始められるのはニ時か三時からだから残業も有り得る、と。この段階で残業出来ないと言っとくべきだったのだ。検査が終わるまで細々した掃除やらをして検査が終わるのを待つ。エレベーター養生は各階のエレベーター入り口の養生とエレベーターの本体内部の養生に分かれる。入り口は三方枠と呼ばれ、本体は籠と呼ばれる。三方枠の方は土曜のうちに材料を加工してあったのであとは貼るだけ、当然僕に回って来た。まだメーカー養生が付いたままなので下地に253を貼らず直にスタイロベニヤをガムテープで貼れるから少しラクだ。一階から屋上までの十階分を社本体の職人と手分けして貼って行く。エレベーター養生は作業員全員が毎日乗って眺めまくるので見た目もきれいに仕上げておかないといけない。ガムテープが曲がったりよれたりしているとやり直しになりかねないので丁寧に。そんなことしてれば手が遅くなるのは当たり前だ。もう一人の本体は籠の中で作業をしている。三方枠がやっと終わって籠の手伝いに行くったのが四時。籠の天井が金網だと知って嫌になった。一番手がかかるパターンだ。金網はサンギを加工して天井の形の枠を作り、その枠に貼る。金網はタッカーと呼ばれる大きなホチキスで止めて、枠そのものは下からサンギをかって押さえる。つまり枠はエレベーターの角に立てられた四本のサンギに支えられている状態で、サンギはガムテでエレベーターの角に止めてあるだけ。エレベーターはそんなに大きな代物ではないので、これでどうにかなる。しかしこれはえらい手間だ。三人がかりで(内一名は戦力外の足手まとい)終わったのは七時四十分だった。それでも僕も呆っと突っ立ってた訳ではなくて、籠の内側の扉にテープ貼りなんかをしているのだ。
   はぁあ。なんで現場に十三時間もいるんだよ。何が休日だ!明日も同じ現場だ。十二時間後にはまたここにいるのかと思うと。