茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(314)ヤメタランス効果共同研究者募集

加藤匡通
六月×日(土)
去年から出たり入ったりを繰り返している派遣会社がゼネコンに一次で入っている現場にまた来ている。前回は三月だったか。内装はかなり仕上がっていて、詰所も建物内に移った。職人も倍近く増え、八十人を越えている。
派遣会社からは外構とだけ言われていた。穴でも掘るのかと期待していたら、はつり屋の手元のガラ出しだった。新築の建物周囲の捨てコンとその下のセメントミルクをはつり屋がはつり、僕たちがバールや小さい金属製の熊手でかき出し、土嚢袋に詰める。セメントミルクは強度を出す土壌改良剤、要するにセメントである。これを混ぜることでコンクリ程ではないがスコップでは歯が立たない固さになる。都心部の外構は基本的に狭い。今、続けて「Y社の頃もそうだった」と書こうとしたけどY社の時は都心部での仕事はなかったな。都内の住宅はたいてい敷地一杯に建てているから外構は狭い場所での作業がどうしたって多くなるが、この現場もそうで一メートル幅の作業スペースだがはつるのは六十センチ幅、動きづらくて仕方ない。捨てコンの下のセメントミルクまで含めて七十センチははつり、かき出している。下の方は只の土なので足元は泥だらけ、コンクリのほこりにまみれ、角の尖ったガラを袋に詰める。昨日はたまたまマスクは持っていたものの、ガラ出しやはつり屋の手元なんて聞いてなかったので皮手は持ってなかった。コンクリガラなんて切れ味の極めて悪い刃物みたいなもんだ。ゴム手で扱う気にはなれない。
  派遣会社からは六人来ていて、そのうちの四人が外構に回されいるが、二人はこの二週間固定で来ているものの他の二人は毎回嫌がって入れ替わってしまうと聞いた。どうも僕は固定の三人目に選ばれたようだ。十年前は荷揚げ屋だの土工だのといろんな会社の仕事がこの派遣会社にも回って来ていたか、最近はもっぱら養生・クリーニングがメインになっている。養生・クリーニングに慣れてしまえば穴掘りやガラ出し、ましてやはつり屋の手元なんて嫌がるに決まってる。自分のことをクリーニングの職人だと思っている奴がはつり屋から「土工さん」と呼ばれたら怒りだすだろう。僕の中では日雇派遣は何でも屋の雑工なのだが、ことに今いる派遣会社には養生・クリーニング屋だと自認している者は多い。
ところで昨日の朝、最寄駅から現場に歩いていたら会社から電話がかかって来た。待ち合わせをしている訳でもないのになんの電話かと思えば、職長が新規の人と待ち合わせをしていたが迎えに行けなくなったので代わりに迎えに行って欲しい、と言われた。職えに行けなくなった?遅刻でもしたのか?と首を傾げつつ、仕方ないから駅に戻って新規を現場まで連れて行った。職長はメールで二日間休むと朝になってよこして以降連絡が取れないのだそうだ。この現場の職長はイケイケドンドンで有名な人である。それが連絡欠勤とは。二日間なので今日も休んでいる。これはもしかしてヤメタランス効果なのか?あの職長すら沈める効力があるのか!
さらに今朝。新規二人を僕が待ち合わせをして連れて行くことになっていた。待ち合わせの七時半の五分前に待ち合わせ場所に行ったが、らしい人はいない。時間を過ぎたら知らない携帯から電話がかかってきた。よからぬ展開しか想像出来ない。案の定、待ち合わせている内の片方からで、痛風が痛くて現場に行けないと言う電話だった。体調が悪くて来れないのは仕方ないけど、もっと早くにかけてこいよ。もう一名からは何の音沙汰もなく、会社に「誰も来ないぞ。」と伝えて現場に入った。結局待ち合わせた二人は二人ともこけ、ガラ出しが間に合わないと監督が派遣会社に電話して急遽呼び出された夜勤明けの人が十時に現場に入って来た。ご苦労さんなことである。
職長を打ち倒し、翌日には二人も沈めるとは、やはり僕には何か特別な力があるのではあるまいか?勤労意欲を失わせる特殊な物質が出ているのかエーテルを伝わる波動なのかはよくわからないが、とにかく何かあるのだ!会ったことすらない人間にまで効果があるのだから極めて強力であることは間違いない。この秘密を解明すればバートランド・ラッセル賞やポール・ラファルグ賞はおろか日本帝国主義の打倒すら可能なのでは?もちろん企業側にとってもうまく使えば生産性向上に役立つだろう。ワタクシ加藤匡通の持つこの特殊な能力、労働者のやる気を失わせる謎のヤメタランス効果を、共に解明しようとする方いませんか?特に資金の潤沢にある企業や経営者の方、経費はワタクシの給料込みでそちら持ち、研究成果はワタクシ持ちでこの特異な能力を研究しませんか!関心のある方は是非御連絡を!(先月二十四日働いて交通費抜き七千五百円で計十七万円と言うことに気付いて愕然としております。生活するために必死ですとも、ええ!)