茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(324)土工手当

加藤匡通
十月×日(金)
  車で通える現場に来ている。既存の建物の耐震改修と新築が並行して進んでいるがどちらも小さな建物なので現場の規模は大きくはない。作業員は三十人程度だ。養生・クリーニング屋の社で来ているが、R社本体はおらず下請けの派遣会社が二社入っていて、僕のいる派遣会社からは僕一人、もう一社から三人が来ている。作業は新築、既存ともに養生、それから既存の引っ越し。ゆるい現場なので養生も追われてはいないし、引っ越しに至っては指示を出す人間がいたりいなかったりでちっとも進まない。まあ、構わないけどな。今日で三日目だ。
   今日は三時からコン打ちが回って来た。R社が雑も受けていると言うより、三時からだけのために土工を呼ぶのを組が渋ったらしい。二人作業で張り出した屋根を支える鉄骨の根元に小さな型枠が組んであって、そこにモルタルを流し込む。今回は小さい型枠なのでコンクリではなくモルタルなのだ。コンクリでは砂利で型枠が詰まってしまう、どころか壊しかねない。それが二十ヶ所近くある。それなりの手間で残業になるかもしれいな。とは言っても作業そのものは大したものではない。ミキサー車から一輪車でモルタルを受け、スコップですくって型枠に流すだけ、特別な技術は必要ない。モルタルだから生コンよりラクだ。型枠にはするすると流れ込んで行く。
   ところが一緒にコン打ちをしている相方は「コン打ちは土工の仕事で自分たちは専門職ではないのだから手当をつけろ」と監督と交渉をしている。以前も書いた通り土工は建築現場の階層秩序の最下位に属する。その土工の分の手当を付けろとは不思議な言い分だ。何よりそこには「俺は養生・クリーニング屋だ。生コンいじるような汚れる仕事なんかする職種じゃないんだ。」と言う差別意識がうかがえて不愉快だった。だいたいこの程度のコン打ち、土工なら鼻歌歌いながらこなす作業なので土工に手当の件を聞かれたら笑われるだろう。努めて顔に出さないようにしながら作業をした。少しでも余計に金を取ろうと言う心掛けは大したものかもしれないが、君の立ち回り方には関心しないよ。が、結局三十分残業になり一時間の残業が付けられた。余計な三十分が手当と言うことだろうか。情けないことに「そんなもんいるか!」と啖呵も切れず一時間の残業代はもらっちまった。
   残業したので予定が狂い、『屍者の帝国』を見損ねた。地元で六時からの映画なんて滅多に行けないのに、なんでこんな日に残業すんだよ?。