茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(343)『イデオン』がない

加藤匡通
六月×日(火)
  地元でよく使っていた本屋、プックエースつくば学園店が先月八日に閉店した。閉店と言っても場所を変えてすぐ再開するから正しくは移転だな。移転先はつくば市内のショッピングモールLALAガーデンの中、五月二十日からだ。移転したら店名がTSUTAYA LALAガーデンに変わってた。店員に聞いたらブックエースとTSUTAYAが提携しているんだと言うが、店の内装や品揃えはレンタルビデオ屋ではなく本屋を全面に出している他のツタヤそっくりだ。本屋としてのツタヤにはつまらないとの印象しかない。元のブックエースも棚が面白かった訳ではないのでこの先が実に思いやられる。棚の面白さで言えば友朋堂だったがそれも急速に昔話となりつつある。ちなみに元々ガーデン内にあったくまざわ書店は撤退した。ここの品揃えは良かったのだが、研究学園駅前に出来たショッピングモールのイーアスつくば内に同系列の大型店アカデミアが入っていて、そっちに一本化したようだ。
  十年遅れてブームの波が届いたらしく母がもう何年か韓流ドラマにはまっていて、僕がレンタルビデオ屋に借りに行くのが日課となっている。週に十本どころでは効かず、棚の作品を片っ端から見ている状態だ。以前は一日ラジオをかけっ放しだったが今ではテレビの韓流ドラマとDVDをとっかえひっかえ見っ放しである。孫の顔を見せることも、安定した収入を得て小遣いを渡すことも出来ない息子としてはレンタル店に行くくらいせねばなるまい。足腰が悪くなった訳でもないのに外出を一切しなくなった母にとって韓流ドラマは数少ない楽しみなんだと思う。
  ブックエースつくば学園店が閉店したと言うことは、DVDを借りる店が閉まったと言うことなので移転先が開くまでの間は他の店でDVDを調達しなければならなくなる。県南のレンタルビデオ屋(この表記がもう実状と合ってないわけだが)はほぼツタヤとゲオとワンダーグーにのされている。僕が移って来た十年前はこれらに回収されていない店もまだあったが、今は痕跡しか残っていない。では、のした側の連鎖店たちがどうかと言うと、当然回転率のいい作品ばかり並べていて面白味に欠けるのである。だいたい俳優別、監督別の棚がない。初めてそれに気付いた時の衝撃と言ったら!今にいたるも茨城で俳優別、監督別の棚は見たことがない。見たい作品は洋邦の別と大雑把なジャンル分けの他は題名をあいうえお順で探すしかないのだ。検索機があるからとかそういう問題ではないだろ。こんなんでは本気で見たい作品を探すと高い確率で置いてないのも当たり前である。で、いつも使っていない店に行って韓流ドラマを探すと品揃えが違っていて母に借りていける物が増えるのだが、これは僕にとって韓流ドラマは比較的関心がないからであろう。皮肉なもんだ。
  数年前に『伝説巨神イデオン』を二十数年、もしかするときちんと全部見たのは三十年ぶりとかで見た。もちろんDVDレンタルである。やはり傑作だった。富野喜幸の最高傑作はこれだ。『ガンダム』じゃない。富野の最高傑作と言うことはこの国のテレビアニメの最高傑作で、つまりこの国のアニメの最高傑作は『伝説巨神イデオン』なのだ。と言うことは世界のアニメの中でも最高レベルの作品と言うことである。この国のテレビ番組の中でも最高レベルではないかとも思っているが、まあいいや。自分たちには制御も理解もできないものに懸命に抗い続ける人々の話である。また見ようと思ったら、前回借りたワンダーグーつくば店にはもうなく、ブックエースつくば学園店にもなかった。今回何軒かレンタルビデオ屋を廻ったのでさらに探してみた。全滅だった。嘘だろ!どうしてあんな傑作置いてねーんだよ!もちろん再開したブックエースと言うかツタヤにもない。『イデオン』も簡単に見れないのになにがクール・ジャパンだ、笑わせるな。