茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(355)『メイトワン 1920』

加藤匡通
十月××日(木)
 毎年十月末から十一月にかけて東京国際映画祭と言うイベントがある。映画祭としての評価とかはどうでもよい。僕にとっては見ることの出来ない映画を上映してくれる場所で、それは映画祭が始まった時から変わらない。来日するスターだの劇場公開の決まっている大作だのはどうでもよく、ひたすら公開予定のなさそうな映画を探して見ていた。スペインの『リベルタリアス/自由への道』やニュージーランドの『UTU/復讐』はそうして見つけた傑作だがどちらも劇場公開はされずじまいだ。熱心に通っていたのは本当は関連企画の東京国際ファンタスティック映画祭の方だが、こちらはもう開催されていない。どっちにしても「通っていた」なんて言える状態だったのは九十年代前半まで、運動に深入りするにつれ、映画そのものを見なくなっていった。その後、映画を見る本数はある程度戻っものの映画祭に行く機会は増えることなく現在に至る。都内に仕事で通っているとはいえ、いろんなスケジュールをやりくりして映画祭に行くのはちょっと厳しい。
  が、今回は行かないと不味いと言う気になっている。『メイトワン 1920』は八十七年の北米映画で、公開当時劇場で見た。劣悪な炭鉱に労働組合からオルグが派遣され、会社は労働運動を潰すために探偵社を雇う。僕たちの住む国ではその役割は武装した私兵たるやくざが担うがアメリカでは武装した私企業が担うのだ!そうした、勝ち目のない労働者の戦いが西部劇のフォルムで語られる。僕が運動に自覚的に関わりだしたのはサラリーマンになってからなので、この映画を見た時はまだノンポリの頭でっかちな大学生だった。それでも大変感銘を受けたのを覚えている。監督のジョン・セイルズは監督デビュー前には『アナーキスト』と言う小説を書いていたそうで、何かのインタビューでは「ハリウッドで極左扱いされるのは簡単なんだ。」と答えている。今回フィルムセンターで関連企画のUCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクションがあって十月二十八日と十一月五日に上映される。劇場で再び見る機会があるとは思わなかった。オルグを派遣した労働組合はIWWだと思っていたが違うらしい。アメリカの炭鉱労働者もまた下層流動労働者であるとも聞いた。そうした、学生の時には全く気付きもしなければ関心もなかったことも含めて改めて見て来ようと思う。しかしあの映画が修復保存の対象だとは、月日が立つのは早いものだなあ。
 他にも『キングコング対ゴジラ』の完全版がようやく大画面で見られるとか、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を再び劇場で見ることが出来るとかあるのだが、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は来年劇場公開するそうなのでそれまで待ってもいいかとも思っている。『キンゴジ』は公開予定が告知されていないので今回行くつもりだ。全長版の十六ミリプリントは貸し出されているのに三十五ミリプリントは存在せず、復元されたオリジナル全長版がビデオになってからも劇場で『キンゴジ』全長版を見る機会はなかった。今回デジタル修復した4Kデジタルリマスター版でようやく大画面で見られる。つーかなんでこれまで三十五ミリ焼かなかったんだよ?フィリピンの『痛ましい謎への子守唄』も見たいけど、八時間はつらいかなあ。それに、そんなに休むのも不味いような・・・
 で、チケットはシステム障害とかで買えないのだが、今日こそ大丈夫なのか?電話、休み時間中かけててもつながんないけど。帰ってからパソコンでやってまだ買えんのかな。不安だ。