賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(常雇?)(413)不審者とは誰のことか
加藤匡通
八月××日(火)
毎朝四時半に起きて、五時四十四分みらい平発の電車に乗っている。秋葉原駅に六時二十分過ぎに着く。今通っている現場は秋葉原乗換なのでJRの改札を通ってプラットホームに行くが、その道中はあまりものを考えておらず、ぼうっとしている。つくばエクスプレスでは座って眠っている。最早朝から本を読む気になどならない。朝の車中でパソコンに入力したり本を開いてマーカーで線を引いてる人は偉いと思う。眠れないと眠れないで苛々するが、眠れても睡眠は足りないのでぼうっと歩いているのだ。
上りのエスカレーターで後ろから声をかけられた。なんだろうと反射的に振り向くと、若い制服警官だった。しきりに、おはようございますを連呼している。一瞬、あれ、俺なんかやっちゃった?と考えながら、つい「おはようございます。」と答えてしまう。警官は「おはようございます。随分大きな荷物だけど、これからお仕事ですか?」。ああ、職質か。面倒なので無視することにし、前を向いた。警官は話しかけをやめない。「無視ですか?少しだけでいいから答えてくださいよ。これからお仕事ですか。」下駄履きにスキンヘッドで大きなリュックと言う目立つ格好でこれから悪事を働こうと言う間抜けがどこにいるのか!と突っ込みたいのを我慢する。一旦対応したらどこまでついてくるかわからないし、一言答えればどんな内容にせよ会話が始まってしまう。まあ、冷静に考えれば所轄が変わるから電車には乗らなかったろうが。とにかく一切相手をしない方がいい。取り調べと同じ、黙秘が一番だ。「どこまで行くのかだけでも教えてくださいよ。」どうして知り合いでもないのにあとをついてくる奴に行き先を教えなきゃならんのだ、お前馬鹿か。「電車が来たら離れますから、答えてくださいよ。」無視。ホントに眠いんだよ、あんたの相手してる暇なんかないんだって。
さすがにホームに電車が入ってくると警官は離れていった。朝の通勤時間だから、あまりしつこくつきまとわなかったのだろう。これが夜なら制服警官に囲まれていたかもしれない。
秋葉原や北千住で若者に職質をしているのはよく見る光景である。彼らが職質されてなんで僕には職質しないのだろうと、ずっと思っていた。怪しさと言うか疑わしさならこっちの方が上じゃないか?来たら思い切り絡んでやろうとも。まさか朝から来るとは思わなかったよ。きちんと対応出来なくて、少し残念だ。