茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(常雇?)(416)明文堂書店

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(常雇?)(416)明文堂書店
加藤匡通
十月××日(日)
  組合に限らず企画の度に置きビラに廻っているが、初期はともかく最近ビラを見て来たという人はいない。それでも懲りずに置きビラを続けているのは、何かの間違いでそれまで関心を持っていなかった人の目に触れて関心を呼び起こすことがあると期待しているからだが、本屋や図書館、公民館では固定客ばかりで偶然はあまり期待出来ない気もする。だから最近はコンビニに置いてもらうよう心がけているが、コンビニだけを廻るとしたって何も買わずにビラをお願いするのは気が引けるのでコーヒー一つでも買いながら廻ると結構な手間だし金もかかる。それでも案外置いてくれるコンビニが多いのが救いだ。
 本屋なんか置いてくれる店はほぼ決まっているので、早ければ二ヶ月に一回、顔を出しに行くことになる。僕が廻っているのは牛久、龍ヶ崎、常総の各市。土浦は個人経営の店は全滅し連鎖店は置いてくれない。つくば、取手も似たようなものだ。前にも書いた通り僕の住むつくばみらい市には本屋はない。坂東や下妻まで足を延ばすことは最近していない。全体に情宣に時間を割けなくなってきている。不味いと思っているけど、余裕ないからね。
  水海道駅前には僕が茨城に来た当初、本屋は三軒あった。駅に近い方から、と書こうとしてもう駅に一番近かった店の名前も出て来ないことに気付いた。二件目が北村書店で明文堂書店が三軒目だが、今も営業しているのは明文堂書店だけだ。下妻出身の龍胆寺雄の『下妻の追憶』を新刊で買ったのはここでだった。
  明文堂書店は今年で創業百四十九年なのだと言う。夏に組合ではない企画のビラを持っていったら、ビラを見ながら店主が「今年は明治百五十年なの?じゃあうちは百四十九年だわ。」と言ったのを聞いて腰を抜かした、とまではいかないものの驚いた。だが、そろそろ店終いを考えていると言う。来るたびに空間の増えていく本棚を改めて見てしまった。教科書販売をしているのでどうにかやってはいけるが、人を雇う余裕はなく、後継者もいないのだと。「文化事業だと思ってがんばってきたんだけどね。」確かに僕がビラを置きに来はじめた頃は他に従業員がいたが、今はいつ行っても店主一人だ。何より本当に客が減ったのだと。「今はみんなスマホでしょ。電車で本読んでる人見ると感謝したくなるもんねえ。昔は高校生が立ち読みに来てたけど、今はさっぱり。今の高校生は学校終わったらすぐ塾なんだって。」
 まだしばらくは続けてくれるのだと思う。開いている限りはビラを持って行くつもりだ。