茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

土浦市への生活保護行政についての要望書と回答書

しばらく前になりますが、土浦市つくば市の新しい「便利帳」が発行されたので、生活保護についての記述の問題点を両市にあてて要望書として提出しました。回答とともにここに掲載します。
まずは土浦市から。


2018年9月27日
土浦市保健福祉部 御中

茨城不安定労働組合 執行委員長 加藤匡通
茨城県土浦市中1184-51 自由と生存の家・茨城
TEL 029-875-9289 FAX 029-875-9290

要望書

日頃は私たち茨城不安定労働組合の活動にご理解・ご協力をいただきましてありがとうございます。
貴市のホームページ及び「土浦市市民くらしの便利帳」に記載の生活保護についての説明は、①誤解を招くおそれがあり、②記載されるべき重要な事項が記載されておらず、③記述がわかりづらく、また④制度へのアクセスの仕方がわかりづらい、ので改善を求め、要望書を提出します。この要望書は、当組合のブログを通じてインターネット上で公開され、また県内の各報道機関へも配布されます。
(1)理由
 厚生労働省生活保護法施行事務監査1 (1)は、「保護の受給要件等制度の趣旨は、『保護のしおり』の活用等により、要保護者に正しく理解されるよう十分説明され、相談内容に応じた懇切丁寧な対応が行われているか」を冒頭に掲げています。監査対象となる福祉事務所においても、「保護のしおり」等に記載されるべき事項が適切に記載されているか否かを確認することが当然に求められていると考えます。
 そこで私たちは、貴市のホームページ及び「土浦市市民くらしの便利帳」、「保護のしおり」の記載等について、①内容が法に適合しているか、誤解を招くものとなっていないか、②記載すべき事項が記載されているか、③記述が分かりやすいものとなっているか、④アクセスが容易であるか等の項目について記載内容の改善を求めます。
(2)具体的な確認点と、貴市のホームページ及び「土浦市市民くらしの便利帳」の問題点
ア 形式面
 相談窓口の場所や連絡先がわかりづらいと思います。相談すべき場所や電話番号が分かりやすく書かれていなければならないでしょう。
 イラストや図表を利用するなどして見やすいレイアウトがなされていることも不可欠ですが、文字ばかりで一見して読む気をなくすものにならないようにすべきです。
 漢字が読めない人も少なからずいるので、ルビがふってあることが望ましいでしょう。
イ 制度の法的位置づけ
 憲法25条の生存権保障に基づく制度であることは、はっきりと記載すべきです。
 また、単なる「最低生活」ではなく、「健康で文化的な生活」を保障するものであることが記載されるべきです。
 生活保護法1条にいう「自立の助長」の「自立」とは、「経済的自立(就労自立)」だけでなく、生活保護を利用しながらの「日常生活自立」や「社会生活自立」を意味するものです。しかし、貴市は「1日も早く自分の力で生活していけるように」と経済的自立=保護から脱却することのみを求めるかのような誤った記載をしています。このような記述は制度の実施主体である貴市の、生活保護制度の理解に対して疑念をすら抱かせるものです。
ウ 権利と義務
 生活保護利用者の権利と義務がバランスよく記載されるべきです。不服申立て権などの重要な権利について教示すべきでしょう。
 保護開始・変更申請権の存在は極めて重要な事柄です。申請から決定まで原則14日の法定期間や手続きの流れ等について書かれていなければ、これでは、どのようにして生活保護を利用すれば良いかが分かりません。
 また、適正かつ自発的な申告を促すためには、申請義務の存在だけでなく、申告した場合の各種控除のメリットを教示することが不可欠です。特に、不正受給と見なされるものの多くを占める高校生のアルバイト料の未申告は、申告しさえすれば多くの控除が認められて殆どの場合不正受給とならずに済むことを積極的に記すべきでしょう。
エ 保護の要件・他方他施策
 すぐに換金できる預貯金等以外は、処分を要する場合でも、生活保護利用後の換金で構わない(但し、その間受け取った保護費の返還が必要)ことを明記すべきです。また、居住用不動産については、原則保有が認められていること、生命保険や自動車についても例外的に認められる場合があることや、125cc以下のバイクについては原則的に保有が認められることの説明もすべきです。
 生活保護法4条2項にいう、親族扶養が保護に「優先」するとの表現は、大変誤解を招きやすいものです。
 扶養の期待可能性のある親族から現に仕送り等の扶養がなされた場合にその分保護費が減額されるという意味であることを正確に説明する必要があります。しかし、親族扶養が保護利用の前提条件であるとか、また、保護利用にあたって本人自身が常に親族に扶養を求めていかなければならないかのごとき誤解を招く記載は改めるべきです。生活困窮者には親族関係が悪化している人も多いので、安心して生活保護を利用してもらえるよう、DV、70歳以上、20年以上音信不通等扶養の期待可能性がない場合には、役所からの扶養照会もされないことを積極的に記載し説明すべきです。
オ 保護の種類と内容
 保護の種類や内容について、イラスト等を利用しながらわかりやすく説明することが望ましいでしょう。最低生活費と収入の差額が支給されることや就労の場合の基礎控除なども図示して説明すべきです。医療についても詳しい説明が必要です。通院移送費については、医療扶助運営要領第3-9(3)が明確に事前に周知を求めている以上、必ず記載されるべきです。また、治療材料費についても説明がありません。

 行政も支援者もそれぞれに、必要な情報がより正確に制度利用者に伝わるよう努力を重ねる必要があります。上記の点につき、一つの参考意見として貴市に具体的な改善を求めます。この件につき10月11日までに回答くださるようお願いします。


以上が要望書です。
以下が土浦市からの回答です。


平成30年10月9日
茨城不安定労働組合
執行委員長 加藤匡通様

社会福祉課長 ××××

回答書

 平素より生活保護行政につきまして多大なるご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 先般ご要望いただいた内容についてお答えします。まず、市民のくらし便利帳につきましては、市のイベントや各種手続き等について多くの情報を紹介するために、基本的な事項を中心に掲載しており、掲載スペースについての制約もあり、詳細まで掲載することができないため、詳しくは各項目に記載してある担当窓口に直接お問い合わせいただく形をとっております。なお、分かりやすい記述、制度へのアクセスの仕方、内容等につきましては今後さらに研究をし、必要に応じ改善してまいりたいと存じます。
 また、市ホームページと保護のしおりに記載する内容につきましては、生活保護法や実施要領等と照らし合わせ、改善すべき部分につきましては、内容に反映させていきたおと存じますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。