茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(453)茨城県内に本屋は何軒残っているのだろう

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(453)茨城県内に本屋は何軒残っているのだろう
加藤匡通
一月××日(火)
 夜勤は続いている。始発で帰って来ると、これまで乗っていた五時四十四分みらい平駅発の電車を隣の守谷駅で見送ることになる。普段乗っている電車を反対側のホームから見るのは妙な感覚だ。
    夜勤のおかげで、あまり嬉しくはないが平日の日中、午後ならどうにか動けるのでビラを置いて廻っている。
    本屋や図書館が中心だが、行くたびにビラを置いてくれる本屋の棚から本が減っている、とは前にも書いた。ある店は店内の三分の一がエロ本で、買える本はないのかと思ったが、現代教養文庫が数十冊あったのでそこから選んだ。現代教養文庫は〇二年に社会思想社の廃業できえたと思っていたが、こんなに並んでいる店がまだあったなんて。現代教養文庫のおかげで香山滋は今世紀の初めまでは文庫本として書店に並び続けた。しかし最大の衝撃はそこではなかった。レジにいる店主の頭上には『竜胆寺雄全集』が並んでいるではないか!初めて見たよ、竜胆寺雄の全集なんて。昔は地元ゆかりの小説家の全集も売れたのだろう。それが今ではエロ本に埋もれている・・・
    またある店には数少なくなった本の中に日焼けして色褪せた一群があった。三十年近く前の本ばかりだった。こういった本があること自体はよくある光景である。その中に新潮社から出ているミシェル・フーコーを発見した。いつか読まなければと思いながら、買っていなかった本ばかりだったので、買うのならここでと思い、高い本ばかりなのでなかなか手が出せず、気がついたら十年以上経っていた。ようやく去年から買い出したが、最初の一冊目を買った時(『狂気の歴史』だった。)、店主が言った。「昔は売れたんですよね。こういう本。」。その地域は僕が知っている十数年前で本屋は三軒あったが、今はその店しか残っていない。今、県内の個人営業店でこうした極めて硬い本が置かれてなおかつ売れることはほぼないと思われる。
 またある店は、売り場が半分になり、本の量は四分の一以下に減った。文庫本も漫画もなくなった。古びた岩波文庫岩波新書も、埃まみれの角川mini文庫も消えた。売れそうに見えるものは雑誌しか残っていないが、今は雑誌も売れない時代なのだ。
 新しく始める本屋もありはするが、基本的にはほぼ連鎖店の新規開店だ。品揃えに面白味なんてないし、それらの店は採算が合わなければ撤退出来る。それにそういった店は、ビラなんか置かない。