茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(465)これは勲章ではない

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(465)これは勲章ではない
加藤匡通
七月×日(水)

 先日現場で怪我をした。いろいろ差し障りがあるので詳細は書かない。何年かしたら書くかもしれないけどな。

 現場で怪我をするのは珍しいことではない。むしろ全くない人の方が珍しいだろう。だが、その怪我が元受けに知れて労災を使う段となると途端に減るのではないかと思う。何度も怪我をしているが、僕は労災を使ったことがない。全部もみ消したのだ。もちろん怪我ったっていろんなレベルがあるので、ほんのちょっと指先を切った、腕に引っかき傷が出来た、なんてレベルなら誰にも言わなくて済んだりする訳だが、そういうのではなく、結構血が出てるレベルでもみ消している。が、今回はそういう話でもない。

 僕の右手の人差し指と薬指は曲がっている。人差し指は第一関節から、薬指は第二関節からで、日常そんなにしげしげと手を見ないからわからないかもしれないが、両手を比べるとはっきりわかる。もはやいつどこでやったのか全く分からないが、何をしたのかは、覚えていないもののはっきりしている。仮設材のパイプはいろんな都合で三十センチとか十センチとかに切ったりする。派遣会社にいたころは、これを集める作業が結構あった。仮設材の集積だったり現場の片付けだったりいろいろだ。短いと持ちづらい。抱えようにも短過ぎてたくさん持てない。そうなると、両手の指に刺してさらにその手で何本か抱えて持つ。これなら一度に何本も運べる。だが下ろす時に失敗して指に刺さった単管が変な方に曲がったりすると、当然指も曲がる。その時は「痛ってー!」で済んでしまうのだ。まさか曲がっているとは思わない。指を曲げて激痛でも走れば別だが、しばらくすれば痛みは取れる。「おー痛てえ痛てえ。」とか言ってればどうにかなる。何度もやっていて、どの時に指が曲がったのかなんてまるでわからない。そのくらいによくあることだった。

 何年も前のある日、指が曲がっていると気付いて医者に行った。派遣会社には伝えてあって、労災は使わず自費で、しかし医者代は全額派遣会社持ちとなっていた。レントゲンを見ながら医者は言った。「これは何年も前のものですね。折れてくっついてますよ。」確かにレントゲンには一旦折れてからやや違う方向にくっついたと見える人差し指が写っていた。骨折しても気付かず治ることがあるとは初めて知ったよ。

 ある同志に「指曲がっちゃったんだよねえ。」と言ったら「労働者の勲章ですよ。」と言われたが、もちろんそんなものは要らないのだ。つーか、アナーキストが勲章とかって考えちゃいかんだろ。