茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(474)ロングスパンから流れる音楽

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(474)ロングスパンから流れる音楽
加藤匡通
八月××日(月)
 八月はどうにかそこそこ仕事があった。とは言え三ヶ月仕事が減っていたダメージから簡単に回復出来るはずもない。さてどうしたものか。
 三階建て以上の現場には大抵工事用の、ロングスパンとかフィアットと呼ばれるエレベーターがついている。階段で資材をいちいち人力で揚げるのは大変だし、高い建物であればあるほど人員輸送にもエレベーターは必要になる。大きさも様々、小さい物は人一人も乗れない荷物専用だが大きい物は四十人五十人が乗れるし、オペレーターがいたりいなかったり、使用には制限があったりなかったりといろいろである。僕が今通っている現場は三階建てだがエレベーターがついている。専属オペレーターはなし、十人程度が乗れる小さな物だ。一ヶ月以上空けて戻って来たらエレベーターがついていてちょっとびっくりした。
 このエレベーターには作動中に音楽の流れるタイプがある。エレベーターが稼働中だから注意しろ、の音楽だ。工事中の足場に取り付けられているので、なんと言うか隙間だらけである。ちょっと手を出しただけでエレベーターと足場の間に挟んで指や手を落としかねない。

 この現場のロングスパンなんか、一階部分に扉がない。エレベーターが一階に停まっていれば扉が開いていたり閉まっていたりするが、エレベーターが上昇したら扉がないから開きっぱなし。上にはエレベーターがあるのにその真下に入れるのだ!おいおい大丈夫か急に動き出したり物を落としたりしたらどうするんだ!こんなの初めてだよ。だから、今動いていると知らせるために音楽を流している。いやこの場合音楽じゃなく他の対策しろって気が強くするが。
 エレベーターの作動音には色々な曲が使われているのでいろんな曲が流れているのを聞いたはずだが、ほとんど覚えていない。そもそも音楽をあまり関心がなく聞く習慣もない。テレビやラジオから流れてくる曲を聞いたり、たまたまその場に流れていた曲を聞くくらいしか音楽に接することはない。なのでエレベーターの作動音も覚えていないのだ。何年も前の夏場に常駐してた現場のロングスパンエレベーターの曲がZARDの『負けないで』だったことくらいしか憶えてない。ちなみに今生まれて初めてZARDって表記した。
 さて、今通っている現場のエレベーターである。最初聞き覚えのある曲だが何だろうと首をひねっていた。多分その段階では一部しか聞いていなかったのだろう。しばらくして気づいた。岩崎良美の『タッチ』だ!おお、こんなところで『タッチ』を聞くとは!
 二十代の監督に「この曲知ってる?」と聞いたら知っていて、さらに在日二十年を越える中国人に聞いても知ってた。再放送を結構やってたみたいだ。僕が高校生の時に放送していたアニメの主題歌だが、息が長い。