茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(社員?)(542)そんなことも判断出来ないのに何を管理している?

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(社員?)(542)そんなことも判断出来ないのに何を管理している?
加藤匡通
一月××日(日)
    潮来にビラ置きに行った。潮来に行くのはやっと二回目である。茨城に来てから数年は仕事で鹿島、鉾田まで行くことはあったが潮来は素通りしていた。数年前に同じようにビラを置きに廻ったことがあるだけだ。
    潮来霞ヶ浦と北浦に挟まれた、以前は水運で大変賑わっていたところである。陸上交通、それも鉄道ではなく自動車がもっぱらになった今では信じられないが、かつては水上輸送が物流の中心で、川沿いの船着き場周辺には人や物が集まり繁華街をなしていた。
    しかし今では見る影もない。JR鹿島線潮来駅前に店はどうにかある程度、駅からやや離れた商店街は見事にシャッター商店街と化している。観光シーズンなら人出はあるのだろうか。店にも路上にも人影はない。釣り人だけがところどころにいて、コンビニもそういう客相手に壁一面に釣り具を揃えていたりする。
 前回来た時、既にいつまで保つかと不安になった本屋は案の定閉店し、看板すらない。同じく前回古本屋が常設市をやっていたショッピングモールはモールそのものが閉鎖、廃墟になっている。前回は気づかなかった古本屋が一軒あったものの、中を覗いた印象は郊外型のエロ本屋に近く、何も買えずに出て来た。
 同じ市内の隣駅延方駅に至っては駅前に店は一軒、近くにコンビニもない。駅は無人、ホームは高架なのに待合室は地上である。駅前の構造は鹿島臨海鉄道と同じ、小さなロータリーがあるだけだ。
 片道二時間の遠征にもかかわらず一冊の本も買えず、敗北感を抱えて図書館を目指す。潮来市立図書館は牛堀町にあったが、こちらは潮来の商店街以上に寂れていて言葉を失った。地方の商店街はどこもこうなのだろうか。こうなんだろうな。これじゃ生活できないだろうに。
 図書館を一通り見てから受付にビラを置いてくれるか聞いてみた。お待ちください、と事務室に引っ込んでからがやけに長い。駄目なら駄目で構わないんだが、何を悩んでいる?しばらく経って、受付の女性が事務室から出て来て言った。「図書館に置いていいか、市役所に問い合わせてみます。これ、お預かりしていいですか?」え、館長が判断するんじゃないの?と言いかけ相手の名札を見て気づいた。シダックスとある。指定管理者制度か!潮来市立図書館は市ではなく民間企業が市から委託されて運営されてるんだ。
 指定管理者と聞くと『ロボコップ』を思い出す。財政破綻したデトロイト市の警察を民間企業が運営する話だ。主人公はサイボーグで悪党とわかっていても企業の重役には逆らえない。そうプログラムされている。公開当時は面白い発想のディストピアだと思っていたが、あれは同時代の少し先を描いていただけだったんだな。
 じゃあ判断できませんよね、と嫌味を言うのをこらえてビラを渡して図書館を出てきた。労働相談や反戦集会のビラを市が許可するとも思えない。やっぱり敗北だ。