茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

土浦市で生活保護水際作戦

4月24日に行った「茨城 震災・雇用トラブルホットライン」に、小美玉市で3月末から車上生活をしているSさん(50歳男性)から相談が入りました。外国人の妻が働いていた会社の寮で生活していたのですが、妻が一時帰国したため寮から出ることになり、仕事も決まらず公共施設の駐車場で車上で暮らしているとのこと。
手持ちのお金も底をついているので、茨城不安労が入っている「自由と生存の家・茨城」に泊まってもらい、市役所で生活保護の申請をすることになりました。

4月27日朝10時から、土浦市社会福祉課に生活保護申請に行きました。
窓口で不安労の名刺を出し、申請に来たことを告げると、担当者が「本人とだけ話します」と別室へ。その後2時間近く待って、12時近くになってやっと戻ってきたので聞くと、家族関係や職歴などについて聞き取りがあったそうなのですが、全部で4人の職員が現れて、揚げ足取りのように、ガソリンの使い方までいろいろなことを言われたそうです。
特に、ある職員が「探せば住み込みの仕事がある」と主張し、実際にハローワークに何度も行っているSさんは「ない」という水かけ論になったので、職員の方から午後から「それではハローワークへ行きましょう」ということになった!!そうです。

そもそもSさんは、今この時点で仕事も家も現金も貯金も無く、どうにもならない状態だから生活保護申請を求めているのに、「ハローワークで仕事を探せ」というのは、何の解決にもなりません。仮に仕事があっても、収入を得られるのは1ヶ月も先だとしたら、その間どうしろというのでしょうか?
このように、生保申請に来た人を「他法他施策の活用」などといって申請させないのは、「水際作戦」と呼ばれ、闇の北九州方式などと言われる有名なやり方です。さすがに、リーマンショック後の年越し派遣村の活動以降は、県内でもあからさまな水際作戦は減っていると感じていたのですが、土浦市はそのようなやり方を続けているようです。

Sさんが「男と男の約束だからハローワークに行く」と言うのを「生活保護の申請に来た人をハローワークに連れていくのは市役所のやり方としておかしいので、考え直すようにと」話したのですが、役所の対応に腹が立ったのでしょう、半ば意固地になっており固辞されるので、仕方なくSさんにハローワーク土浦に行ってもらいました。私たちは再度、市社会福祉課の窓口を訪問し、責任者と思しき(こちらが名刺を出しても名乗りもしない)人と話をしました。

生活保護申請者に対する土浦市の対応について問いただしたのですが、「本人が働けるならどこでも行きたいと言うから」「仕事をすることが自立につながる」など、要はどこかよそで仕事を見つけて欲しいという様子がありありとうかがえます。「本人は生活保護の受給を求めて申請に来たんです、仕事と生活でいえば、まず生活が安定しなければ仕事はできないのではないですか?」と言うと、そこには特に反論はありません。
「だいたい、これまでもいろいろな役所で申請同行しているが、いきなりハローワークへ行きましょうなどと言うところは初めてだ」と言うと「ウチには“就労相談員”がいるので・・・」などとスジ違いもはなはだしい説明。
とにかく本人は保護を求めてきたのだから、まず申請させるように念を押しました。

その後、茨城不安労と居住してもらう「自由と生存の家・茨城」の設立経過や活動について丁寧に話し、いわゆる無料定額宿泊所ではなく、単なるアパート(間貸し)であることを説明しました。仮に生保申請をした場合、扶助費が出るまでの間、市として一時金の支援などがあるかと聞くと「やってません」。逆に、自由と生存の家について「食事の提供はあるのか?」と聞くので「ない」と答えると「それなら無料低額泊所での保護も考える」などと言うので、「言うまでもないけれど、「無低」に入って就労自立なんて難しいですよね」とただすとそれにも返答は無し。家賃や契約関係についても細かく聞かれ、電気やガス料金のおよその金額まで聞かれました。(その後、自由と生存の家・茨城に戻ったら、市役所職員らしき?人が家を偵察に来ました。)

結局、夕方5時を過ぎて本人が戻ってきたので話を聞いたところ、結局ハローワークでも市の就労指導員?がしつこく住み込み仕事への応募を勧め、求人票を50枚も持ってきたそうですが、片っ端から電話しても受け付を終了しているなど応募できないところがほとんど(この辺は年越し派遣村の時と同じです)。茨城県内の求人はなく、かろうじて応募可能とされたのは、かの東京電力の関連会社が募集する福島県郡山市での仮設住宅の建設の仕事で、日給8000円、月16万ちょっと、2ヶ月契約の募集です。寮費などの記載はないのでわかりませんが、手取りとしては12,3万がよいところでしょう。この仕事で「自立」出来るとは到底思えず、土浦市としては、とにかくどこかよそへ行って欲しいと言っているに他なりません。

そもそも、生活保護の申請をさせないこと自体が違法ですし、「失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について」(2009年12月25日 厚生労働省社会・援護局保護課長通知 社援保発第1225第1号)によれば、

1.速やかな保護決定
 失業等により生活に困窮する方が、所持金がなく、日々の食費や求職のための交通費等も欠く場合には、申請後も日々の食費等に事欠く状態が放置されることのないようにする必要がある。そのため、臨時特例つなぎ資金貸付制度等の活用について積極的に支援し、保護の決定に当たっては、申請者の窮状にかんがみて、可能な限り速やかに行うよう努めること。
2.住まいを失った申請者等に対する居宅の確保支援
 失業等により居住を失ったか、又は失う恐れのあるものに対しては、まず安心して暮らせる居住の確保を優先するという基本的な考え方に立ち、「居宅生活可能と認められる者」については、可能な限り速やかに敷金等を支給し、安定的な居住の確保がなされるよう、支援すること。(以下略)

と、国も失業等によって住まいを失った人への支援を積極的に行うと言っています。

Sさんは今回の土浦市の対応に「ショックです。もう疲れました」と申請の意欲を失ってしまいました。それが市役所の狙いだとすると許されることではありません。いずれにしても、問題は何も解決しておらず、仕事も収入も無いままの状態であることには変わりありません。とりあえず、自由と生存の家・茨城に泊まってもらっていますが、家賃や生活費のめどは何もたっていない状態です。

私たちは、このような土浦市のやり方について憤りを感じています。これはSさん一人の問題ではなく、おそらく、生活に困窮して市役所に相談に行った人が皆同じような対応をされている(実際に「稼働年齢層は申請できない」「申請しても1カ月かかるから働いた方が早い」などと言われている)と考え、生活保護申請のあり方について是正・正常化を求めていきたいと思います。(キ)