茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(230)『失踪日記2 アル中病棟』補遺

加藤匡通
十月××日(火)
肝心のことを書き忘れていた。吾妻ひでおが通っている医者は僕も通っていたところだったのだ。わっはっは。いや、だからどうしたって言われたらそれまでなんだけどさ。
  僕は酒をやめて二年前後で医者に行かなくともどうにかなりそうだと思い、通うのもやめてしまった。毎朝起き抜けに飲んでいた抗酒剤も同じ頃には飲むのをやめているが、抗酒剤そのものはまだ手元にある。必要になればすぐ飲めるように、だ。飲酒欲求がいつやって来るかなんて本人にもわからない。十年やめててもふとしたきっかけで戻ってしまうのはよくある話である。
酒をやめた当初、一日がこんなに長いのかとびっくりした。その直前まで一日の半分はへべれけになり、夜になって本腰入れて飲み始めれば記憶は途切れ電話を掛けたのも受けたのも覚えてない状態で過ごしていたので、時間が経つのは早かった。より正確には時間の経過を覚えていないのだ。素面で向き合う現実を前に「酒なしでこの辛い現実に、どうやって耐えていくんだ?」と思ったのは吾妻ひでお一人ではなく、アルコール依存症から回復しようとしたことのあるすべての人が抱いた不安のはずだ。もちろんそれは酒を他の言葉を置き換えれば、他の依存症にも通用する。そして辛い現実とは、今の僕にとっては天皇制で資本主義のこの社会である。だが、「酒なしで耐える」つもりはない。僕が生きやすいように変えてやる、待ってろ手前ら。