茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(97) 安全は階級に応じて保証される

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(97)
加藤匡通
五月××日(木)
この時期朝六時台に家を出る時はまだ長袖が必要で、それも含めて三枚着ているが、都内の駅を降りる頃には長袖はいらなくなっている。日中そろそろ気温は二十五度、平年より高いようだがどのみちTシャツ一枚で充分だ。今の現場は日陰がなくて、昨日昼寝しようと直射日光の下で横になっていてあまりに眩しいので手近にあった雨合羽を頭から被ったら熱がこもって顔だけ汗だくになった。もちろん眠れやしない。帰りも下手すりゃTシャツでOKなくらいだが、つくばエクスプレスを下りるとやっぱり涼しくて一枚羽織っている。
現場へ歩く途中に免震構造のマンションが売り出されている。家賃だか分譲価格がいくらなのかは知らない。そもそも僕のような貧乏人には縁のないものだとしか思っていないので金額が目に入らないのだ。新築の高層マンションは免震構造を謳ったものが目立つけど年収いくらあれば買えるんだろう。安全は階級に応じて保証される。やってられるか!
自宅のあるつくばみらい市は三月十一日、震度六弱だったが僕の家に大した被害はなかった。つくばみらい市は県内でも被害の少ない地域に属する。断水も停電もなかった。僕の家のある地域はその中でもとりわけ揺れの小さかった方なのだと思う。本は雪崩たけど、倒れた家具すらなかったからね。しかしそれは市の全域に被害がなかったということではない。市役所に行ったら建物はぱっと見問題なさそうだったが、建物をぐるっと取り囲んだ階段部分は三十センチ近い段差や亀裂が走っていた。図書館が再開したのはいつのことだったかな。何度も言ってるけど屋根瓦が落ちたり塀の一段目が落ちているのはよく見る光景だ。
 都内でも建物への被害は出ている。足立、江戸川あたりはY社の現場があるのでよく歩くけど、マンションの外溝部分、玄関手前の階段なんか欠けたり大きなひびが入っているのは珍しくない。建物本体は免震構造でなくとも杭を打ったりしてある程度しっかり作ってあるものの、外溝部分は地面にそのまま乗っかってるだけだ、大地が激しく動けば保たないさ。
 知人は世田谷の築三十年を越える木造アパート二階建の二階に住んでいたが、地震のあと大家が不安になって建築診断士に見てもらったら次に大きな余震が来たら倒壊の可能性が高いと診断され、アパートを出ることになった。今は被災者支援策のひとつである都営住宅に入っている。半年は家賃無料だそうだ。都内在住でも被災者はいるってことだ。ちなみにその知人の年収はだいたい僕と一緒。久し振りで顔を会わせたのが現場でお互い別の派遣会社から同じクリーニング屋に通っていた時で、詰所で知った顔があった。気付いた時ゃ笑った笑った。あいつのアパートが倒壊の恐れありなら可能性ありだ。
僕は四畳半一間トイレ共同といったアパートが好きなんだが、それはやっぱり階級に帰着する問題だと思っている。狭い方が落ち着くんだよ。家賃も安いしな。でも、それと安全を引き換えにしたつもりはない。誰だってそうだと思うんだけど、これもやっぱり自己責任だと、努力して階級上昇して安全を金で買えと、一代で築いただか親の資産を受け継いだだか知らんが金持ち共は言うのだろう。けどな、手前の安全のために他人を蹴落としての階級上昇などお断りだ。ルンプロは宵越しの銭は持たねえんだよ!(なんか啖呵の切り方を間違えてるような気もする。)