茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(116)2012年秋公開

加藤匡通
八月××日(金)
 給湯器の台を設置しに来た現場に結局入ることになった。台の真後ろの狭いところにもブロックを積まなきゃならないので、「ここはやりたくないね」と言っていたら案の定と言うかなんと言うか。
 この現場、何故か穴を掘ってばかりだった。ブロックを積むのは狭いところばかりで重機は入らないから当然手掘り。掘った土は前回掘った十メートル近い無用の溝に入れていく。他に土を出せる場所がないからだ。さらにブロックを積んだあと、隣の敷地側にブロック基礎が丸見えなのでそれを隠すために土を入れるからと、埋めたところを掘り返す。かと思えばそこへ、玄関前の階段設置のために掘った土を他に持って行く場がないからと一輪車で持って行き開ける。一度掘った穴を埋めてまた掘って、何をしているのだ?まるで人生のようだ。
 今日は玄関前の細長い空間を火曜にコン打ちするため重機で掘削している。明日は別の現場の予定なので今日中に型枠まで終わらせたい、そう思って作業を急いでいた。天気予報は三時以降に強い雨と言っているからだ。しかし、ぴったり三時から雨が降り出したちまち雷を伴う土砂降りになった。組みかけの型枠があっと言う間に水没、掘削した土間予定地は水溜まりになっていく。慌ててダンプの砕石を撒いて形ばかりの通路を作るが水溜まりに砕石入れてる訳だから足元はぬかるんでぐちゃぐちゃだ。雨は激しくなるばかり、これでは作業にならない。明日の予定を変更、コン打ち段取りを継続にして今日は早上がりになった。
 とは言ってももう四時だ。全身ずぶ濡れだがこんな降りでは着替えてもまた濡れるのは目に見えてる。Tシャツだけ代えて北千住まで出て銭湯に寄った。現場周辺の銭湯は見当をつけておらず、豪雨の中を探し歩く気にはならない。僕の他にも現場で降られたとおぼしき人が何人かいる。
 さて、しかしこの日最大の衝撃はこの後にあった。会議も入れずにテレビにかじり付き、最後に叫んだ。来年秋かよ!丸一年先じゃないか!
 自分で掘った穴を自分で埋めては掘り返し、ずぶ濡れで予定は流れ、楽しみは延々先延ばし。ああ、まるで人生のようだ。