茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(274)『鋼鉄はいかに鍛えられたか』を読了する

加藤匡通
八月××日(土)
  今日の現場は九時から。都心の高級住宅地のマンションでの作業である。養生・クリーニングのR社の仕事だが本体はおらず派遣会社から二人だけ、内容は長尺剥がしと聞いている。長尺は長尺シート、床に貼ってある合成樹脂の厚手のシートのことだ。糊付けされていて、カッターで切れ込みを入れてめくって剥がすのだが、べったりしっかりついていると大変やりずらく、腰を痛めやすい。専用の機械もあるが、屈んで力を入れて引っ張る状態ではなくなるので腰を痛める可能性は減るものの、しかし作業がすいすい進む訳ではない。久し振りの体力仕事だからがんばりますか。
  マンション改修工事と聞いたが工事の中心は雨樋の交換だと言う。雨樋を交換するためだけなら建物に沿った足場を組むだけでいい。建物の壁にボルトを打ち込んで足場を固定すれば済むはずだが、この現場は建物に控えを取らず、それ自体で自立した、ジャングルジムのような足場を組んでいる。自立した足場の方が部材の量は多いし手間もかかる。金額も倍ではきかないだろうが、金をかけても建物に傷を付けたくないってことか。確かにマンションは超高級って感じでやたらに広い廊下には絨毯、壁には絵画、部屋内は見ていないが世帯数も通常の同じ規模のマンションの三分の一、いやもっと少なそうだ。幾ら払えばこんなとこに住めるのか見当もつかない。同じ区内には野宿者もいるって言うのに。
  実際の作業は朝イチで資材搬入路への簡単な養生、バルコニーの簡単な清掃、長尺剥がし、剥がした長尺を含めたガラ出し。どれも軽めのものばかりで、ここまでで一時半。あとは足場が組み上がった後に足場の下にあるコンバネを片付けて終わり。と言うことで鳶の仕事が終わるまで待機になった。なんだ、今日もラクな現場なのか。
   待機中に『鋼鉄はいかに鍛えられたか』を読了した。こんな場所でこの本を読み終えるとは、どんな皮肉なんだ?かつて多くの人間を感動させたはずだが僕にはちっとも響かない。君たち党と一体化し過ぎだよ。文字通り身を削っての人民への奉仕もまったく共感出来ない。君個人の喜びは党を離れては存在しないのか?まあ、僕は鋼鉄になる気なんかそもそもないけどね。鈍らなままで結構。
   四時前に鳶の仕事は終わり、コンバネを片付けて作業終了、現場を出たのは四時半だった。ラクな現場だが、居心地は大変よろしくない。ルンプロをブルジョアの城内にいれるな!