茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(299)外出時、会社名は出さないこと

加藤匡通
二月××日(金)
  マンション改修工事に来ている。ぼつんぼつんと切れ切れで呼ばれていて今日で三日目、続いた方が道具も置いていけるしラクなのは言うまでもないが二日続けて来たことはない。駅の反対側には古本屋があるがそこまで足を延ばす余裕もない。
  作業はバルコニーや共用廊下の手摺養生。足場の上の作業でもゴミは落ちるし時には手摺を踏み台にもする。まああまり大っぴらにやっていいことではないが、基本的には監督も黙認だ。なので汚れるし傷もつく。それを防ぐために厚手で幅広のSPVテープと言うものを手摺に貼るのだ。ビニールが金属に貼り付くのと同じように手摺にくっつくんだが、このマンションの手摺はそうした材質ではなくてどうもつきが悪いので補強のためにパイオランを使っている。パイオランは粘着力がそんなに強くないので、数ヶ月貼りっばなしでも剥がした時に糊の後があまり目立たないのだ。風が強いと苦労するが、風さえなけれは面倒な作業ではない。ただし運動量は多くないのでこの季節は普段より余計に着込まないと辛い。初日が風が強くて寒いしやりづらいしと懲りたので、二日目からはヤッケのズボンをはいている。SPVを使うとこの手摺は半分以上覆える。手摺はかなり太い丸いもので僕の手では一周できない。直径十センチを越えているだろうか。テープが剥がれないように力を込めて手摺をしごいていたら左手の親指の付け根あたりが痛くなって来た。これは三日ともそうなった。左手ラクしてんだなあ。
  この現場では元請けの名前の入ったメッシュのチョッキを作業員全員が着ている。そうしないと不審者扱いされかねない、世知辛い世の中である。こういう現場だと住人の目を気にしながらの作業で、住人にあいさつしたり、作業指示や注意を大声で出来なかったりと色々気を遣う。そういうもんだと思っていたら、初日の新規で監督が言った。「昼休みはチョッキを脱いで出歩いてください。」。以前元請けに「作業員がビールを飲んでる。」と通報があったのだそうだ。通報自体は以前からあったが方法が変わり、最近は携帯か何かで撮影した動画が送られてくるようになった。「時代は変わったよね。」と僕と同年代だろう監督はぼやいていた。飲んでへべれけになったとか暴れているのならともかく、ただビールを飲んでいるだけで元請けに通報すること自体が僕には理解出来ないが、電話で漠然とそちらで働いている人がと言われるのならまだしも動画を送られたら個人まで簡単に特定出来てしまい、逃げようがない。お互い監視し合う息苦しい世の中になった。そういうの、回り回って自分の首を絞めていくと思うんだけどな。建築現場で職人が昼休みにビールを一杯、はかつてそんなに珍しいことではなかったけど、今や犯罪扱いだ(考えてみればサラリーマンだって昼に飲んでる人はいて、そんなに特別じゃなかったと思う。)。監督もかつての気分を共有しているからこそ、ぼやいてるけど昼休みに酒を飲むなとは言わないのだろう(当たり前のことなのでわざわざ言わなかった、が正解です。こんなこと、それこそわざわざ書かなくていいんだけど、何かの間違いで監督がこのブログを読んだら後で現場で大変なので付け加えておきます。びくびく。もちろん自分のかつての現場での飲酒は棚上げです!)。
  現場近くのコンビニに求人の貼り紙があった。夜勤が時給千二百円。それだけでは弱いと思ったのだろう、駄目押しのように「一日一万円」と書いてあった。地元のコンビニなら考えるんだがな。しかし茨城はコンビニ夜勤で時給千円だ。