茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(366)企業成長の理由

加藤匡通
三月×日(水)
  誰もが名前を知っている会社の創業本家現社長宅に来ている。場所はもちろん高級住宅地、こんな仕事でしか来ないところだ。
 派遣会社の手配の係は「多分早上がりです。」と言ったが、昨日は四時だった。作業はコア抜きの手元と養生清掃と聞いた。コア抜きとはコンクリートの壁や床に穴を開けることである。斫りの場合はコンクリートをのみのように先の鋭い物で壊して行くが、コア抜きは新たに配管したりする時にコンクリを円筒形にくり貫く。円筒形の専用のカッターがあるのだ。何ヵ所もあるのならともかく、通常そんなに時間はかからない。僕も朝監督から詳細を聞くまでは早上がりだと思っていた。ところが監督はコア抜きが三ヶ所終わったらカップ掛けだと言う。斫り屋もその場で初めて知って別の現場からカップを持って来てもらう段取りをあわててつけている。カップは文字通りお椀を伏せた形をしている、平面を削る道具である。お椀の部分は刃で、グラインダーとかサンダーと呼ばれる回転によって切ったり削ったりする道具に取り付けて使う。朝は九時開始の予定が発動機の到着が遅れて作業は九時半過ぎからになりコア抜きは午後イチまでかかった。それからカップ掛けである。駐車場の排水絡みを手直ししたいらしく排水管を通すためのコア抜きと、既存の排水桝への水勾配の修正でカップ掛けなんだが、水勾配の修正ってそんな簡単に出来たか?水が排水口に流れず途中で溜まったりするのを直すのは手間のかかる作業のはずだ。そう思っていたら案の定いつになっても終わらず四時を過ぎ、斫り屋は僕に「片付けようよ」と言い出した。監督の意向は無視、と言うか彼の言うことを聞いていたらこの調子だと五時を過ぎても帰れない。作業服もリュックも粉だらけだ。
  創業本家社長宅の駐車場は広く、駐車場だけで僕の家の床面積よりはるかに広い。駐車場専用のトイレまでついてやがる。多少苛々していたのは早上がりの期待が崩れたからだけではない。
  そして今日。斫り屋は十時の休憩を取らずにカップ掛けを続け、三時前に監督のOKをもらって帰って行った。カップ掛けの際僕は掃除機の筒先を持ってほこりを吸っている。なので十時の休憩は取っていない。手元とはそう言うものなのだ。もちろんうれしくなんかない。昨日も取ったのか取っていないのか曖昧だった。休んでていいよと言われたもののちょこまかと動かされたのだ。斫り屋が終わってからピット内水替えだの掃除機掛けだの片付けだのが始まるのでのんびりもしていられず三時の休憩も取らずに作業を続け、それでも五時には間に合わず五時半にやっと終わった。監督に日報にサインをもらうと定時のままなので聞いた。「今五時半で、十時も三時も取ってないんですけど?」「十時三時は自分で取ってもらわないと。(開始が)九時なんで三十分は勘弁して下さい。」ええ!あんたんとこの社長宅の仕事で経費削減すんのかよ!三時なんか休んでたらまだ終わってねーだろうが!ふざけんな!お前らそうやって会社でかくしてったのか!
 「加藤さんどこか固定の現場あるんですか?」「いろんな現場をぐるぐる廻されてますよ。」「じゃあ、うちの現場お願いしようかな。」それなりに評価されてしまったらしいが、残業代払わない監督の現場に誰が行くか!