茨城不安定労働組合

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「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を廃案にすることを求めます

以下の声明に組合として賛同しました。


天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を廃案にすることを求めます

【要旨】天皇の「発議」による法の制定は違憲であり、日本国憲法体制の根幹を否定する。異なった見解を排除してなされる立法は、民主主義に反するもので許されてはならない。あらためて広く議論を喚起するべきであり「退位特例法」は廃案にせよ。

 現在制定されようとしている「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」には、その立法の前提に憲法上の重大な問題があります。このような法律を、十全な論議も経ないで制定されることがあってはなりません。

 日本国憲法は、第四条において、天皇の国政に関する権能を否定しました。さらに、第九九条において、天皇自身に憲法の尊重と擁護の義務を課しています。
 二〇一六年夏のいわゆる「天皇メッセージ」において、明仁天皇は、天皇が高齢になり身体が衰えても「国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくこと」は無理だとし、重病などによりその機能を果しえなくなった場合に、天皇の行為を代行する摂政を置くことについても、適用を否定しました。天皇による「拒否権」の事実上の行使により、皇室典範上に規定のない「天皇の退位」を求め、天皇・皇室関連法の改定を要請したのです。これは、明らかに国政に関する干犯であり、違憲行為であることを十分に認識しながらなされた、天皇による政治行為です。

 現天皇は、即位にあたって「日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い」、それからのちにも「護憲」の意思を繰り返し表明しています。にもかかわらずなされた今回の天皇自身による違憲行為は、明確に否定されねばなりません。事実上、天皇の「発議」による皇室関連法の改定は、現憲法と皇室関連法の法的位置を、大日本帝国憲法と旧皇室典範のそれに、限りなく近づけるものです。
 現天皇は、さきの「天皇メッセージ」においても、またそれまでの多くの発言においても、「国事行為」として憲法に規定のない自らの公的な行為のすべてを「象徴としての行為」としています。このように、天皇や皇族たちにより現実に進められていることは、一貫して天皇の権能の拡大であり、解釈改憲とも呼ぶべき事態がそこにはあります。

 天皇の「退位」は、現憲法においても皇室典範においても規定がなく、憲法制定の当初から、むしろ意図的に天皇の「退位」は否定されてきていますが、それでも、天皇の究極の「人権」として、天皇の地位からの「脱出の権利」を認めるべきではないかという有力な憲法解釈が存在します。しかし、今回のいわゆる「退位特例法」は、まったくそのようなものではありません。
 今回の「退位特例法」には、第一条に「趣旨」として、天皇のこれまでの国事行為のほか「象徴としての公的な御活動」を賛美し、「国民」が天皇を「深く敬愛し」「お気持ちを理解し、これに共感」という、法として他に類例のない記述で満たされています。これらはいずれも立法にあたって議論の対象とすらされていません。そのことは、この法案がきわめて異質なものであることを表しています。
 また「退位特例法」においては、現天皇は退位後に天皇に準じる「上皇」となり、現皇后は皇太后に準ずる「上皇后」となります。「上皇」が憲法上の国事行為を行うことができないのは明らかですが、そもそも憲法上の規定のない「象徴としての行為」については、さらに憲法上の制約があいまいなものとして、恣意的に維持されることになるでしょう。「上皇后」については、皇太后と同様の存在とされており、摂政となることも否定されていません。
 「上皇」「上皇后」という存在とともに、同じく新たに規定された「皇嗣」という存在ともあわせ、天皇および皇族の地位や権能は、明らかに拡大されており、日本国憲法体制における天皇や皇族の制約もまた、同時に緩和されています。これらはいずれも、立憲主義に基づいた法体制を突き崩し、「天皇制」を強化安定させるためのものです。敷衍するなら、それは即ち、憲法上の国民主権をも揺るがすものとしてあります。

 天皇や皇族の権能やその行為について、厳密な議論をすることなく、それどころか国会での開かれた議論自体があたかも「不敬」であるかのごとく拒絶して、衆参両院議長の与野党間調整により、法制定の内容や経過を隠蔽しつつ進められていることは許されません。
 さらに、天皇の「退位」に伴い、新天皇による「皇位の継承」がなされることになります。「退位特例法」制定における、このような憲法上の問題をそのままに、なし崩しの退位や即位が行なわれることに対して、私たちは強く懸念を持ち、批判せざるを得ません。私たちは、まずもって「退位特例法」の廃案を強く求めます。

2017年5月19日