茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

天皇に対する抗議文

以下の抗議文に組合として賛同しました。


天皇に対する抗議文

天皇明仁 殿

 国の機関である天皇は、憲法上いくつかの制約を受ける存在です。
 立憲主義の基本原理は、主権者人民によって国家の恣意を縛ることにあります。だからこそ、憲法第99条は国家の機関を担っている人間に対して、憲法尊重擁護義務を課しているのです。そしてこの条項のトップに上げられているのは天皇、すなわちあなたです。

 いうまでもなく天皇は、憲法第7条に列挙されているところの「国事行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と、第4条において明記されています。
 しかしあなたは、2016年7月13日のNHKリーク放送、8月8日には「国民」に直接訴えかけるかたちでのビデオメッセージを放送させ、そのことによって政治家を動かし、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を国会に上程させるに至りました。
 この一連のあなたの行動は、紛れもなく憲法違反の行為です。私たちは、まずこのことに対して強く抗議します。

 そもそも、あなたは退位の理由として、「天皇の象徴的行為」が十分果たせなくなったということを挙げていますが、この、「国事行為」とは区別される天皇の「公的行為」なるもの自体が、戦後象徴天皇制が発足して以後も行われ続けた天皇の逸脱行為を、後付けで正当化するために生み出された、いわば天皇条項の「解釈改憲」の産物です。あなたは、「天皇の象徴的行為」といういい方で、憲法解釈上も議論がある天皇の役割を、自分で決めたのです。
 今回あなたが発議し、政治家が忖度することによって、「皇室典範」の事実上の「改正」とそれに伴う関連法「改正」がおこなわれようとしています。民主主義とは真逆な態度と言わざるをえませんが、天皇の行為を認めた政治家の責任と共に、そのような権利がないのに「法改正」を発議したあなたの責任も大きいと言わなければなりません。

 あなたの父親である昭和天皇は、「天皇家の家法」といわれた戦前の「皇室典範」を廃止し、新たに国会の下で制定される一般の法律としての「皇室典範」が作られる際に、「皇室典範改正の発議権を天皇の手中に留め置けないだろうか」という願望を強く抱いていたといいます(『芦田均日記』)。もちろん、現行の「皇室典範」に、天皇による「改正発議権」は認められていません。しかし今回あなたは、違憲の行為を重ねることによって、実質的にそれを自らの「手中」のものとしました。

 私たちは、将来的に天皇制という身分差別の制度をなくしていくことを求めています。ですから、あなたが天皇を辞めることに反対はしません。しかし、それが「上皇」や「皇嗣」などという新たな皇族身分の新設と制度化を行い、天皇制の拡大をもたらすことになる法改正には反対します。退位するなら天皇を辞めるだけでなく、皇族からも離脱して下さい。
 「天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づく」と憲法では明記されています。この総意には私たちは含まれていませんし、ましてやその総意とは決して「一般意志」ではありません。
 上記の通り考えるものも少なからず存在することを認識されるよう、書状としてお送りします。

2017年5月19日