茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(36)

          加藤匡通

六月××日(金)


 目の前では解体屋が家を解体している。白い厚手の防炎シートで囲まれた木造家屋を重機を使って壊し、出て来た木材をダンプにきれいに整理しながら積み上げている。二、三メートルの間隔で隣の家だが解体屋は気にせず水を撒きながら作業を進めている。
 僕はそれを横目で見ながら階段積みの手元をしている。建物玄関にあるような地面から数段程度の階段は、土盛りをして階段部分にはブロックを置いて作られている。僕は 基礎の穴を掘り土を寄せ、コンクリを練り、ブロックを運ぶ。相変わらず指示がないと次に何をすべきなのか分からない。段取りが呑み込めていないのだ。
 解体されている家は同じ現場内にある。少し前に通っていた現場だが一段落して他の現場に行っていたら残工事に呼ばれた。通っていた時で新築工事自体は完成し、引っ越しも済んだのでこれまで住んでいた家を取り壊している訳だ。跡地にも何か建つのだろう。
 解体現場は、得意と言っていいかどうかはともかく、好きだった。重機での解体の手元で水撒きていうパターンではなく自分で大バールを振り回していい現場だと大喜び。日頃の鬱憤晴らして金がもらえる、なんと素晴らしい!もっとも本気の解体屋として大ハンマー振り回して建物の壁を壊すという仕事は本職にとてもじゃないが体がついていかず三カ月も続けられなかったけどな。僕に出来たのは石膏ボードの壁を壊す内装解体までなので、解体屋の数には入らないだろう。けとまあ、今でも家屋の解体なんか見てると楽しそうだと思ってしまうのだ。なんで僕はあっちじゃなくてこっちでブロック積んでるんだろう、と考えてしまう。そんなんだから仕事覚えないんだ、って声が聞こえてきそうだな。
目の前では解体屋が家屋を解体している。