茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(125)日比谷の出来事二つ

加藤匡通
十月×日(土)
  月曜は休日だが仕事の予定、だった。しかし現場の進行状況からすると月曜に出ても休日だから大きい音は出せないし材料は買えない。と言うかそれ以前に出来る作業は一通りやってしまって後は土間のコン打ちくらいしかないがそれこそ休日は出来ない作業だ。他の作業は元請け側が状況を整備してくれないと出来なくなっているが、これはそんなに珍しいことでもない。狭い現場での作業で職人は嫌になっているようなので、まあいいか。
  職人が仕事を嫌になるとどうなるかと言うと、現場を投げ出すのだ。日雇派遣の時、一度経験した。日比谷の飲食店の内装解体でのことである。解体屋一人に手元が僕一人で、三、四日通った。内装解体は新しい店が入るからで、内装は表面だけでなく、例えばカウンターを根こそぎぶち壊していたと思う。手元とはいえ片付けだけでなく僕も解体をしている。当然ゴミが大量に出る。しかしゴミの回収を産廃業者に頼んでも業者は来ず、店内はやがて解体された内装で溢れかえった。もちろん作業スペースはない。解体屋のおっさんは(考えてみたら今の僕と同じくらいの歳だろう)業を煮やし、親方に電話してその現場は中止になった。別の業者が突貫でやったんだろう。さすがにこれは一度しかない。ゴミをどうするんだろうと思っていたらの急展開に唖然としたさ。普通、増員するなりしてなんとかこなすんじゃないかと思うんだけど請負だからそれも出来なかったのかなあ。あの解体屋、あんなことして次の仕事回ってくるのか?
  月曜が休みになったので連休だ。じゃあ今夜はゆっくり映画でも見に行くかと都心まで出た(これは嘘だね。連休じゃなくても見に行ってる。)。日比谷で、劇場で見たことはなかった『チャップリンの独裁者』をやっているので有楽町で下りた。同時代のファシズムに正面から立ち向かった映画である。改札を出ると駅前広場に巨大な日の丸が林立している。何事かと身構えたら、この数年活発になっている市民の顔をしている排外主義右翼の屋外集会だった。何も『独裁者』見る前の僕の前に出て来なくとも。抗議の意思表示をして取り囲まれて殴られるだけならともかく、現状では何もしていないのに逮捕されかねない。横目で睨んで通り過ぎてしまった。誰も来ない学習会をいくら繰り返しても、街頭で勝てなければ意味などあるまいに。くそ!