茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(247)都心で遭難

加藤匡通
二月×日(土)
  朝から雪が降っている。相変わらず耐震改修工事の現場である。増員して五人で作業をしている。塗装ケレンは順調にいくと一日に二棟、丸一階分こなせる。溶剤は零度以下だとうまく働かなくなると説明書にはあるが、こんな天気でもいつもと変わりはない。しかしこんな日に丸一日真面目に作業していたら帰れなくなると、ケレンは午前中で止めた。なのに午後も監督はここぞとばかりにこれまでに溜まっていた雑仕事を振ってきていつになっても仕事が終わらない。午後になってから他職は自分たちの分の仕事が終わると次々に引き上げて行く。車で来る職人が多いが、無事に帰り着けるかは既に怪しい。三時の一服前あたりから派遣会社の同僚たちが目に見えて苛々して来ている。俺に当たられても、と思うが人徳のない職長故に仕方ない。現場の中は雪が積もって見事に真っ白、まるで別世界だ。こんなに楽しいのになんでみんな苛々するかなあ?鉄板の上など二十センチは積もっていて、つるつる滑って危なくて仕方ない。
  結局現場を出たのは四時半だった。列車ダイヤはだいぶ乱れているらしい。さて、こんな天気の日には映画でも見に行くかと新宿まで出た。帰りとは反対方向である。せっかく大雪が降って都市機能が麻痺し、その都市にいるのに街を見ないって手はないだろう。地下鉄は案外問題なく進み、駅を出ると新宿の東口は傘を差した人の波、しかしいつもよりははるかに少ない。歩道も人が歩いていないところには雪が積もり、それどころか車道にまで雪が積もっている。都心の道路なんてその通行量の多さから、少なくとも轍には雪が積もらないと思っていたが、轍にも雪が積もり道路は全面か白くなりつつある。それにこんなに車通りのない新宿なんて初めてだよ。正月より少ないじゃないか!都知事選前日で駅前には宇都宮健児が演説に来ているけど、いや人の少ないこと。まあこの雪じゃどの候補でも変わらないだろうけどな。気を付けて歩いているつもりだけれど何度か転んだ。
  『ザ・イースト』を見ようとシネマカリテに電話で時間の確認をすると、八時台の最終回は客が帰れなくなるかもしれないので上映するか検討中だと答えられてしまった。そんなの自己責任でいいんじゃねぇの?当惑しながら『オンリー・ゴッド』の時間を確認しようとバルト9に電話すると、こっちはそんな心配の気配が微塵も感じられず安心した。連日最終上映開始が午前零時以降の映画館は違うね(そんなとこ国内でもほぼないと思うけどな。)。前売券を買おうとしたらディスカウントショップは早仕舞いしている。客ではなく従業員自身の帰り道を心配しているだろう、早仕舞いの店は少なくなかった。
  前作の『ドライブ』は実に面白い映画だったが今回は監督が暴走、僕はタイの街中に置いていかれた。あんた何でカラオケ歌ってんの?映画が終わって九時過ぎ、雪は一向に降り止まない。新宿駅には僕のようなお馬鹿さんが多数。山手線は止まっているけど中央線はどうにか動いている。いつもの倍近い時間かかって秋葉原まで出たものの、つくばエクスプレスまで止まっていた。ほお、僕が知る限りでは一、ニ回しか止まったことのないつくばエクスプレスが止まるとは。六時半頃には止まってしまったらしい。改札前には運転再開を待つ人たちが長期戦を覚悟したのか座り込んでいる。けど今夜中に動き出せるのかもわからないな、これじゃ。正直つくばエクスプレスは止まらないんじゃないかと思っていたが、仕方ない。帰宅を諦め友人に電話をした。うーん、これならもう一本映画見る時間あったかと思いながら新宿へと戻った。
  と言うことで友人宅に泊まり、都知事選の朝を都内で向かえた。秋葉原に着いたら電車はどうやら予定のニ時間遅れで動いているらしい。十一時過ぎてるのに電光掲示板は九時の電車を表示している。