茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(259)鳩の糞掃除

加藤匡通
五月××日(金)
  またマンション改修工事だ。もちろん違う現場。建物は毎度お馴染みの短管足場に灰色のメッシュシートで覆われている。バブルの頃のマンションですら二十年以上経っているので、続いても不思議ではない(ついでに言えばバブルはほぼ僕の大学生時代と重なる。ちっとも成長してないのにもう二十年以上経つのかよ。)。ただ、以前よりこの手の仕事がよく回ってくるのは何でなのかはよくわからない。
  マンション改修工事は基本的には全面再塗装とそのための下地補修が中心だ。今回の現場も基本は塗装である。が、僕の仕事はベランダの床掃除。床もモルタル補修したりペンキ塗ったり防水塗装をしたりするが、その前に高圧洗浄して汚れを落とす。が、いくつかのベランダは鳩の糞がひどくて先に掃除をしとかないとベランダが大変なことになってしまうので僕が掃き掃除をするのだ。箒と塵取りと言うごく当たり前の掃き掃除の光景だが、中には園芸用の土の袋が劣化して破け、ベランダ中土だらけになっているところもあって、こうなると掃除ではなくスコップ使っての泥かきと言った方がいい。一カ所の掃除そのものはそんなに大変ではない。犬猫の糞は嫌だが鳥の糞は気にならない。けど足場からベランダに出たり入ったりがやっぱり手間だ。さらにガラ袋に入れた糞や土も足場から下ろさなければならない。監督は「一日で終わらせていい」と言ったけど、こんなの一人で終わる訳ねぇだろ。
   実はこの現場、僕の住んでいるつくばみらい市の隣の市にある。現場まで車で二十分、車通勤の許可も取ったから大手を振って駐車場に入れる。しかも朝礼は八時半!家を出るのは余裕を持っても七時半で大丈夫だ。普段なら現場に入ってる時間だぜ?おかげで起きるのは六時でいい。普段四時半には起きのに、ああこの至福。もちろん布団に入る時間を一時間半遅らせたりはしない。それでも十二時に寝て六時間眠れるなんて!新聞も読めるし作業も出来る。やっぱりまじめにこっちの職探ししよう。
  とは言え、この現場には三日通ったが初日は夜、都内で学習会があった。日雇派遣復帰後は都内での仕事の帰りに寄っていたので交通費は千円までで済んでいたけど(交通費は千円まで自腹である。僕は嫌でも月に二万交通費を払っていることになる。千円以下で行ける現場なんてないからだ。)、今回は全額自分持ちだ。…こう書いたら、それが当たり前だって気がして来た。済まん、僕が間違ってた。学ぶのに出費をいとうてはいかんよなあ。
  二日目は二人に増員、掃除よりガラ袋の運び出しがメインになった。袋はたくさんあったし端から自分で運ぶつもりだったから重くはしていない。しかし中身の入った袋を持って足場を移動するのはやっぱり骨だ。それに、この間まで入っていた耐震改修工事の足場はスーパーゼネコンが元請だけあって床板のアンチは一枚半、つましフルサイズのアンチとハーフアンチ一枚、組んであったが、この現場を含めて最近行ってる改修工事の足場はアンチ一枚分の幅しかないのだ。作業の安全性と経費のせめぎ合いが伺えるけど、やりやすいのは幅が広い方に決まってる。ついでに言えば、スーパーゼネコンでは各ベランダへの昇降階段がどうにか用意されていたけど、余所の現場にそんなものはなく、手摺は直接踏み放題。養生する手間もかけられないらしく、ウエス渡されて「汚したらこれで拭いといて。」。そんなんでいいのか?
  二日目後半から雑が回ってきて、一人に戻った三日目も雑が続き、結局四時過ぎまで引っ張られた。近くのシネコンで『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』を四時五十分から上映で間に合うかとやきもきさせられたが、どうにかセーフ。…これも監督が文句言われる筋合いじゃないよなあ。もちろん大した映画じゃなかったさ。