茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(265)丸の内ルーブルも閉館

加藤匡通
七月××日(土)
  夕方に用事があるので三時までに終わる仕事がもしあれば出る、と我が儘を派遣会社に言った。用事が真っ昼間なら諦めて仕事を休むが、早上がりの現場ならどうにかなる時間に用事があったので、一応聞いてみたのだ。そんな都合のいい仕事が出て来るとは思っておらず、昨日の夜は映画を見る気でいた。ところが、長くてニ時間と言う仕事が出て来たと電話があった。おいおいホントかよ。それは是非やらせて頂きます!
   と言うことで今日は十時から都心でお仕事である。ぴったりの時間にすると都内に出る人で座席が埋まってしまうので、九時着で家を出た。九時なら現場周辺で座ってコーヒーも飲めるだろう。それにしたって起きるのは六時半、なんといつもよりニ時間も遅いのだ!夢のようだぜ!…ささやかな夢だなあ…
   作業はビルの地下一階にある足場材の地上一階への荷揚げである。派遣先は塗装屋だが現場で連絡を取る相手はビル管理会社の人間と聞いている。行ったら塗装屋はそもそもいなくて僕はビル管理会社の人間と一緒に、彼の指示で動いた。これは違法な二重派遣にあたる。だが、知ったことか。
  地下一階の改修をしていて天井の作業をするのにローリングタワーを使っていたがもういらないので片付けたいと言うことで、ローリングタワーを一台解体して事前に解体してあった足場材とともに一階に運ぶ。ローリングタワーとは足下に車輪が付いていて押したり引いたりして動かせる足場のことだ。多分法律で二段までしか組んではいけないことになっていて、この現場でも二段だった。二段と言っても上に立てば三メートル半を越える高さになる。そんなにややこしい物ではないので二人ならあっという間に解体出来る。荷揚げは台車とエレベーターを使えたし、管理会社の人に声をかけてから作業が終わって現場を出るまで一時間かかってない。二日続けてこんなとは、ラッキーと言うよりこれで当分の運を使い果たしてなきゃいいんだが。
  用事は夕方、また映画が見られる。また携帯で検索して『300 帝国の進撃』を見ることにした。地元でも上映しているが、そろそろ上映回数も減る頃だろう。悪くすれば上映時間が合わなくて見損ねてしまう。古代ギリシャを見逃す訳には行かないのだ。現場からそれ程遠くもなく上映時間も手頃な丸の内ルーブルで見ることにした。この段階では丸の内ルーブルがどんな映画館だったか思い出していない。切符を入手し映画館の窓口に行って閉館のお知らせと言う貼り紙を見つけて声を上げてしまった。嘘だろ、またかよ。
   都内で映画をみるのは住んでいた世田谷から出やすい渋谷、新宿が中心だった。もちろん短館上映や二番館、名画座はそこまで出たものの、封切りを見たのは渋谷、新宿で、有楽町あたりの封切り館は使っていない。だから丸の内ルーブルで映画を見たことはほぼない(一度東京国際映画祭で来たことがあるような気はする。目玉のようなシャンデリアや座席の並びに見覚えがある。)。館内にこれまでの主な上映作品のポスターが貼ってあったが、ここは東急レクリエーション系列で、見た覚えのある映画は渋谷の東急文化会館、主にパンテオンで見ている。四百席を越える劇場なんてもう維持出来ないってことなのかなあ。シネコンは劇場の系列を無化するしな。
   映画はペルシャギリシャを露骨にイラン対アメリカに重ねていた前作よりはましになっていた。しかし性別問わずのマッチョな残虐絵巻には腰が引けた。事実もあんなだろうとは思うが、あまりのマッチョさに対して、である。まあサラミス海戦を映画館で見られただけでよしとするか。
  しかし二日続けて早上がりとは言え映画館の閉館を知らされるとは、全く嬉しくない。ちなみに丸の内ルーブルは『300 帝国の進撃』は二十五日までで、八月三日の閉館まではワーナーの旧作をフィルムで上映するそうだ。時間があれば見に行くか。時間あるといいなあ。