茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(377)屋上にも石綿あり

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(377)屋上にも石綿あり
加藤匡通
七月××日(水)
 二日だけ、と言われて屋上の防水シート撤去に来た。先週は一日だけと言われて大変有名な観光スポットに行ったら結局一週間、仮囲い一枚隔てて観光客でごった返す蒸し風呂のような現場に通わされたが、今回は二日で済みそうだ。同じ現場に入り続けていて、一日だけ応援のつもりだったのだがもう十日も離れている。派遣会社は僕を戻すつもりあんのかな。
 この現場、本職の防水屋がいるのだが、防水材から石綿が検出されてしまい、防水屋には石綿作業の有資格者がいなかったので派遣会社に撤去作業が回って来たらしい。去年の夏に石綿撤去のための資格を取ったが、その時一緒に資格を取った同僚たちは半分以上が派遣会社を離れている。社会保険サマサマって感じだ。石綿の入った防水材は特別な防水材ではない、建物の屋上でよく見るやつだ。こんな物にも石綿が入ってるのか?防水屋は「これまでずっとマスクなしで作業してた」と笑っている。僕もこれまでに何度かひっぺがしたことがある。もちろんマスクも何も無しだ。
 僕たちは防水屋の手元、剥がした防水の片付け搬出と派遣会社からは聞いていたが、資格が必要とはつまり剥がすのも僕たちと言うことで、本職の防水屋と仲良く並んでシートにカッターを入れ、シートをひっぺがしている。防水材はアスファルトみたいなゴムみたいな物なのでカッターはたちまち真っ黒のベタベタになる。もう他の作業には使えない、これで何か切ったら切った物も真っ黒になる。これが終わったら捨てないと。防水材は日差しですっかり熱くなり軍手をしていても握れないくらいに熱い。膝を着いての作業だが膝も熱い。軍手もたちまち真っ黒、一日で廃棄だ。シャツやズボンも黒くなったがこっちはまだ許容範囲。とは言えクリーニングで来ていくのは無理な汚れ方だ。防水シートは熱で柔らかくなっていて、これなら作業もしやすかろうと聞いてみたら、柔らか過ぎてむしろ扱いづらく、冬場の方が撤去しやすいと言われた。
  夏場、直射日光の下での作業で体はきついが、防水屋は僕たちをお客さんとして扱っているのでなるべくラクな作業に廻し、さらに小まめに休憩も入れてくれている。こんな扱いも珍しい。それに石綿の含有量も少なく、何よりゴムのような防水材にくっついているので飛散する可能性がないので通常の石綿撤去のような全面養生の必要がない。屋上でこの時期に全面養生などしたらその中は直射日光の下のビニールハウスと化す。そんな死亡事故を招くようなところで作業せずに済んでよかった。ただ、何も養生がないただの開放空間ってのもどうかとは思うんだが。