茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(121) 有給休暇なのか?

加藤匡通
九月××日(月)
 歩いて三十秒のところに次の現場がある。今の現場は今日まで、明日から金曜までで徒歩三十秒の現場を終わらせると言う。面積だけで言えば次の現場は今日で終わりのとこよりずっと広い。建物正面は車五、六台分の駐車場、大部分が土間コン打ちでブロック積みなんかほとんどないからこそ出来ると思えるものの、強行軍であることに変わりはない。今週は毎日六時まで残業だと思っていて下さい、その代わりに次の現場は割がいいので残業した分を土曜に振り向けて土曜を有給休暇にしましょう、と言われた。土間コンは手間に対して実入りがいいから無理して月内で上げて浮いた分を全員の一日分の日当に回します、と。
 もちろん有給休暇はこのようなものではない。残業の有無に関係なく同じ職場で半年働けば有給休暇は発生する。今回のものは単に残業代の振り分け、有給休暇とは言わない。儲からなくても有給は出すもの、だ。日々雇用、日々失業を繰り返す日雇派遣でも有給休暇は適用される。でもそれは法律上の話で、日給月給で有給なんてまずない。なので、職長考えたなと喜んでしまった。有給なんてサラリーマン時代以来だから十五年振りか。
 色々問題はあるが(制度的に正しくないとかなのにそれをよりによって労組の委員長が喜んでしまうメンタリティーとか)僕が気にしているのは違うことだったりする。前に給料が出たら『戦時下抵抗の研究』を買いに行こうと書いたが、あれは勢いで書いた修辞ではなく本気である。今月の給料日は連休が絡んだのでこの前の金曜に早まったが、金曜は読書会で無理、土曜は六時半まで残業、調べたら古本屋は七時までで現場はいつものように都内東部で古本屋は都内西部、二十三区を横切って行ったら六時頃出てないと間に合わない。今週いっぱい残業が続くと当然買いになんか行けやしない。それどころか定例の会議なんかも難しい、映画なんて論外。こういう時は自分はなぜ働いているのだろうと考えてしまうよ。まあそこまで言わなくても、いつになったらあの店に行けるんだか。売れてる可能性はあんまり考えてないが(なくなってたらその時はその時だ。またどこかで見かけるのを待つ。)、一週間経ったら懐具合の問題で買いに行く余裕がなくなっているんじゃないかと思う。高い買い物が出来るのは給料もらった直後だけだよ。
 古本屋で六千円と言われると通常は手を出そうとは思わない。一冊での最高額は『バブーフの陰謀』の六千円だったが、この時はかなり酔っていた。一見の客の振る舞いに店主は大喜びで、本店の場所まで教えてくれた。同額で手を出せなかった映画化されなかった脚本を同人誌が復刻した『フランケンシュタインゴジラ』は今でも悔しい。学生時代で手が出なかったが、二十年以上どこでも見かけない。この路線の怪獣映画は評価が高いのに脚本、特に検討用台本の類が商業出版されていないのが不思議でならない。って、やっぱ関心がどマイナー過ぎますかね。他に高い買い物は『バクーニン著作集』や『イデオン記録全集』なんかだが、そういった買い物は全てサラリーマン時代だ。日雇派遣の前半時代は何より金があれば酒屋に行ってしまっていたので高い本は買えなかった、もとい、買わなかった。しかし六千円で高い買い物とは、自分でもスケールの小ささに笑ってしまうよ。
 とまあ脱線しつついろんなことを考える訳だが、ホントに土曜休めんのか?現場終わらなきゃ休めないぞ。