加藤匡通
十月×日(土)
映画評を書きたい訳ではない。感想を少しだけ書いておく。一回だけミュージカルシーンがあったが、全編あれをやっていれば僕の評価は跳ね上がったろうけどそれはいいや。
原作は読んでて身につまされたがテレビは見てないので今一つつながりが分からない。が、まあともかく藤本幸世三十一才は正社員になれた。めでたく、と書かないのは「そもそも正社員になることがいいことなのか」という正社員幻想への批判に基づくものではない。そんな問題のはるか手前でつまずいている。藤本は面接で童貞と馬鹿にされて観客にも「こいつ落ちるな」と思われるが、女好きの社長の修羅場が突然展開され、なんと社長の代わりに刺されてしまうのだ!お詫びなんだか知らないが、それで正社員採用になる、と。おいおい、たかが正社員に文字通りに命懸けかよ!なんという現状認識だ。しかし残念ながらそれは正しい。くそ、やってられるか!