茨城不安定労働組合

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日雇い派遣日記(69)『フリーター、家を買う』

十二月××日(火)

             加藤匡通

 今テレビでやっている『フリーター、家を買う』を見ている。最近はテレビをあまり見なくなっているのでこれは年に一、二本しかない例外と言っていい。もはやアニメも特撮も見てないからなあ(まったくもって余談ながらこの数年で一番熱心に見ていたのは『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』である)。原作は、作者がまだ一部の読者から怪獣小説の有望な書き手と思われていたころ(その方面の新作も待ち望んでいる。頼むから書いてくれ)からの読者なので当然読んでいるが、ここで原作小説とテレビ版の違いについてどうの、とかテレビ評をしようとは思わない。
 原作、テレビともに「フリーターを脱却するために努力しろ、正社員になれ」というメッセージを発していて、それは原作者の他の作品にも共通する(怪獣小説など自衛隊が絡むので顕著である。というか、多分このジャンルは政治的には保守的なのだ、残念ながら)保守的な思想の現れなので読んでいてやになるが、その話を展開するつもりもない。
 では何の話かというと、番組に出てくる作業服の話である。二宮和也がやってる主人公は高速道路を建設中の現場でアルバイトをしている。そこの現場労働者がまあカラフルな作業服を着ていること。多分現場であれだけ各人ばらばらにカラフルな作業服を着ていることはないと思うが、というか作業用品屋の作業服コーナーでしか見ないような色ばっかりだがそこは突っ込まない。番組中の作業員は毎回卸したての、下手すりゃ糊が効いてるんじゃないかとさえ見える(当たり前だが糊の効いた作業服なんて着てる奴はいない)汚れの全くない新品を着ているのだ。おいおい、毎日新品かよ、洗濯じゃあんなにきれいにならないぜ。テレビだから、作り物の世界だからとは思うものの、やっぱそりゃないでしょ。
 二十年前に八王子の山の中でガードレールの取り付けをしたことがあるが、その仕事をしたという記憶しかない。詳細は全部飛んでいる。学生時代で、まさか肉体労働で食うことになるとはまるで考えもしなかったよ。恩恵をこうむったつもりは欠片もないが、バブルだったしな。南大沢という地名で、まだ京王線の南大沢駅が出来る前の話だ。どんな作業内容だったか確認したくとも職長(当時この言葉自体知らなかった)兼雇い主の父ももういないので確かめ様もない。道路工事関係はこの時だけ、日雇派遣では一度もないので作業が実際にどんななのかは分からないものの、地盤を削ったり、土を入れたり砕石入れたり側溝設置したりアスファルト敷いたりだろうと想像がつくので、汚れ具合も想像がつく。アスファルトなんか油だから一度ついたらいくら洗っても落ちやしない。そんなところまで再現しても誰も喜ばないか。でも、仕事して汚れるのは当たり前だろ。そこを描かない現場仕事なんて絵空事なんじゃないの?