茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(499)土工終了(多分)

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(499)土工終了(多分)
加藤匡通
五月×日(日)

 連休明けから設備の仕事に戻れそうだと連絡があった。ほっとした。早朝に隣の駅まで車で出て始発で事務所に行くのも、日雇派遣と変わらない金額で働くのもかなりきつい。まして、設備でろくに重い物も持たずにいたところから一日中スコップ握り続けるなんてすっかり体力の落ちている身にはしんどい。それでもこの一ヶ月でだいぶt楽にはなったから、体力も少しは戻ったのだろう。

 W社の土工最後の仕事はコンクリート打設だった。現場に着くまでは一階立ち上がりなので大したことないだろと職長は言っていたが、実際始まってみると当たり前のように違った。コンクリが固くてバイブをかけても流れない、さらにポンプ車の後ろに生コン車を二台つけて生コンをポンプ車に次々に流し込むはずが一台しか入らない。十時三時の休憩などなく昼も四十分だけ、それでも片付けまで終わって現場を出たのは六時過ぎだった。なのに残業は一時間しかつかないのだからやっていられない。
 僕の担当は叩きで、半日薄暗い型枠の下にいた。生コンはただ型枠に流し込んでも鉄筋の入り組んだ型枠の奥までは全く入らない。なのでバイブレーターをかけて流れていくようにするが、それだけでは足りないので型枠の下の方ではコンクリが流れ込んできた部分の型枠を叩く。すると生コンは振動で動く。原理はバイブと一緒、いや逆だな。バイブが叩きと一緒、が正しい。叩くのには叩き棒とか呼ばれる専用の木槌を使う。金槌は、力加減を間違えると型枠を壊しかねないので叩き棒が足りないときにしか使わない。叩く場所は当然移動するのでいつまでも同じところを叩いていると上から怒鳴り付けられるから、型枠の音には注意していないといけないし、コンクリートの入っていないところを叩き続けたりしたらやっぱり怒鳴り付けられる。コンクリが入れば型枠の音は変わるからだ。
 W社の土工はみんな極めて真面目なのか、休憩が潰れても自分から、「その分残業代よこせ」なんて言い出さない。人によっては違うのかもしれないが、W社はその傾向が強い。これもしんどい。納得出来なくとも現場に一番後に入って一番仕事の出来ない奴の言うことなんて誰も聞きやしない。
 まあとりあえず土工は丸一ヶ月で終わりだ。この一ヶ月は仕事の後に映画を見たり本屋に行ったりをあまりしていない。体力的にも金銭的にも余裕がなかった。古本屋はこの一ヶ月で一回しか行ってないんじゃないかな。そんなことも辛かった。
 三度目の緊急事態宣言が出たが、都内で映画を見る気でいた。しかし日程を間違えて憶えていると気づいた。うわ、『非情城市』見逃したか!手持ちの金も少ないし、都内に出るのは諦めようか。連休明けに現場に行く交通費を残していかないと。すっかり自転車操業に戻っちゃったなあ。