茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(519)出張先でプロティノスを読む

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(519)出張先でプロティノスを読む
加藤匡通
一月××日(月)
 先週来た現場にまた来ている。木曜に帰って来たのに日曜の夜に戻って来た。ホテルも同じだ。

 現場は配送センターとからしい。年末に行った同じく配送センターだかのコン打ち現場の倍の広さだ。都内じゃこんなに広い施設なんか作れない。まだ捨てコンの上に基礎を組んでいる段階で、僕たちは捨てコンの上に設備のスリーブの取り付け位置を墨出しし、鉄筋の中にスリーブを取り付けている。

 前回来た時は一日だけコン打ち合番があった。三人来ていて僕だけ合番、他の二人はスリーブ取り付けである。

 朝一で今日の打設範囲の説明があったが、明らかに型枠が出来てないところが全体の四分の一もある。コン打ち当日に型枠が組み上がっていないなんて聞いてこともない。打てないだろ、これじゃ。案の定、途中からコン打ちが滞りだした。当たり前だ。型枠の一方が立っていなければ生コンは流れ出す。ちょこちょこ打つ場所を変えながら打設を続けるも、ポンプ屋も土工も呆れて「中止だよ中止」と口にしている。なんで監督は前日の内に手を考えなかったんだろう?十一時過ぎに早めの昼飯になった。その間に型枠大工になんとかさせるらしい。

 この日のコン打ちは何とか恰好がついたものの、結局予定したうちの一割程度は打てずに終わった。スリーブのあるところも含まれている。ここはいつ打つの?また僕が呼ばれるの?ここ遠いからそんなに来れないよ?

 今回は設備のスリーブではなく建築のスリーブ取り付けで呼ばれている。鉄筋が組み上がっていないので、予定している設備のスリーブが全部ついている訳ではない。なのになんで建築のスリーブを取り付けに来ているんだかわからない。まあ何をしようが金が入ってくるならいいんだが、聞いていた話と違い、建築のスリーブは取り付け位置の墨も出ていなかった。大工が型枠を立てるのに、鉄筋の中に適当に置いてあるだけ。職人と顔を見合わせ、図面を見ると位置も高さも合ってない。補強筋を入れるのが今回の仕事と聞いていたが、そのはるか前の段階だ。その場にいた建築の監督に話を聞くと、建築はスリーブ取り付けについて何もわかっていないと判明した。恐ろしいことに僕よりわかってない。誰がスリーブを取り付けるのかすら把握していない。職人がスリーブ取り付けには何が必要なのか説明し、どうにか理解した監督は上の者に相談する。当然その時間は待機だ。・・・大丈夫かこの現場?

 結局、高ささえあっていれば位置はずれていいと決まった。こうして文字にしてしまうと普段と変わらないように思えるが、普段は鉄筋をよけるためにいろいろ苦労している。今回それは一切しなくていいと言われ、唖然とした。いくら通気だからって、ええ?まあ、やんなくていいってんならもういいや。

 宿に戻り、プロティノスを読む。以前読んだ『善なるもの一なるもの』を再読したが、案外面白く読めた。前回はなんでこんな議論に付き合わなきゃならんのだと思ったんだが、これはこれでありか、くらいに思えるようにはなった。もちろん納得は出来ない。イデア論ですらついていけないのに、その向こう側としか思えない新プラトン主義の議論に納得なんか出来ないだろ。アンダークラスは諦めろって言ってるに等しいんだぜ?まあでも、この一冊は読み切ろうか。時間かかりそうだけど、待機時間あるし。