加藤匡通
十二月××日(木)
先日石鹸箱を回収に行ったところよりはるかに近い、ほとんど目と鼻の先と言っていい位置に銭湯があった。なんのために銭湯マップ持ち歩いてんだよ、よく調べろよって感じだ。今日はゆず湯なので、せっかく都内に来ていて近くに銭湯があるならそりゃ入りたい。何度も書くが茨城に銭湯はほとんどない。だからゆず湯も自宅の小さな浴槽でしか入れない。やっぱり大きな湯船でのびのびと手足を伸ばしてゆず湯に入りたいよ。
明日は呪うべき天皇制の休日、とは言え休みは休みなので夜が遅くとも構わない。映画見るかと思ったが、銭湯に入ってからだと選択が限られる。しばらく考えて久しぶりにオリジナルの『キング・コング』を見に行くことにした。劇場で見るのは二十年振りじゃないか?が、十六ミリなのはともかくとして、なんと吹き替え、さらに八十分もない短縮版だった。いきなり船が出発していて何しに船が出てるのかも分からないし、伏線は見事に全部断ち切られている。テレビの吹き替え短縮版は端折った分台詞でつじつま合わせてるけどそれもなし。出所はどこなんだ?珍しいバージョンを見たと思って納得することにしよう。
本当は『キング・コング』と『駅馬車』の二本立だった。『駅馬車』は劇場で見たことはないので見たかったんだけど、ゆず湯が勝ってしまった。次に上映されるのはいつになるのやら。なんだかこう書いていると僕は楽な方へ楽な方へと流されていく駄目な人みたいだな。僕は十年前、日雇派遣をやりながら野宿者支援に関わっていた。その頃山谷の活動家に「君はなんで日雇いをしているのか」と聞かれて正直に流されてここまで来ましたと答えたら「なんだ、アナーキストの確信じゃないんだ」と言われてしまったことがある。ワタクシそんなに立派な人ではありません。今でもやっぱり、いろんなとこから流されてここにいるですよ、ええ。