茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(322)

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(322)藤棚で変身してジャミラと会う
九月×日(火)
  千葉にマンション改修工事へ来ている。昨日はマンションを囲んで立つ足場に「最大過重百五十キロ」「安全帯使用」なんて看板を着けて回った。廊下から見える位置、との指示でわかるように半分は住民へのアピールだ。今日は以前来た時にもやった手摺根本のプラスチックカバー移動と駐輪場の屋根取り付け。手摺カバーは前に他の現場の時に書いたものとほぼ同じ、塗装の邪魔になるから外している。あの時はカバーを取り外して事務所で保管していたが、今回はカバーを上に上げて塗装の邪魔にならない位置でテープで止めている。いろんな業者が出入りするうちに引っかけて外れたり、一緒にテープで止めたカバー留めのビスがなくなったりするような気がするので完全に外してしまう方がいいと思うのだが、僕が来た時には作業はある程度進行していて下手すりゃ初めからやり直しになりかねないから何も言わずに同じやり方でやっている。
  前に来た時は二人呼ばれたが今回は僕一人、しかし作業は二人でないと出来ない物もあって、そういう時は一番若い監督が一緒に作業する。今日の三時から始めた駐輪場の屋根取り付けがそのパターンだった。本来のマンションの駐輪場を工事で潰しているらしく、中庭の藤棚に屋根をかけて仮設の駐輪場として使うらしい。実際には屋根をかける前からもう使っていて、屋根が後から追い付いてくる感じだ。屋根かけは前回もやっていて、その時はブルーシートをロープで巻いてた。テープで留めたりもしたが、とても保つとは思えない。が、現場の所長も一緒に作業をしていた職長もこのやり方でいいと言う。所長が「とれたらその時考える。」と言ったので、その時に作業するのが僕ではないことを願っていたが、昨日の朝、現場に入って真っ先に屋根を見たら二つの藤棚のうち一つは藤棚にロープが巻き付けてあるだけの状態、もう一つもシートに水が溜まり、今にもこぼれそうになっている。着けて数日で一枚は外れたらしい。当たり前だ。今回は簡単に外れないようにコンパネを板線で縛った。藤棚の上でコンパネにインパクトで穴を開けるのも板線を絞るのも僕である。安全帯は着けているものの肝心の落下防止の設備がないので意味はない。藤棚だけだと足下は線で大変心許ないがコンパネを敷くと面になって板線で絞ってなくてもかなり安定する。時々仮面ライダーの変身ポーズをしたりしながら(高いところに登るとやりたくなるのだ)どうにか時間いっぱいで一つだけ屋根を完成させた。
  この現場は駅への帰り道に銭湯がある。前回は定休日に当たっていたので入れなかったが、昨日、今日はどうだろうと近づいていくと、煙突から煙は見えないし、屋根の下、二階相当にある窓も開いてない。もう営業してないのかとがっかりしながら正面にまわると開いていた。広い浴槽で「風呂はいいね。風呂はリリンが生み出した文化の極みだよ。そう、思わないかい?碇シンジ君。」とか相変わらず誰に言ってるのかわからないことを言いながら伸びをする。いやー、風呂はいいね。総武線からはよく銭湯の煙突らしきものをを見かけていたけど、今回ようやく千葉の銭湯に初めて入ったよ。四百三十円と少し安い。スーパー銭湯じゃないのに駐車場があったのは、自動車がないと生活できない地域性の現れだろうか?
   銭湯を出てさらに駅へと向かうと古本屋がある。表からみると小洒落た感じで僕が探すような本があるとも思えないのだが中に入るとそうでもない。前回も入って買っていったが、今回はその時買えなかった本を買いに来た。『ジャミラ 朝は近い』という本がそれで、『ウルトラマン』の『故郷は地球』に出てくるジャミラはこの本のタイトルになっているアルジェリアの少女からとられている。はじめてそれを知ったのはいつだったろう。佐々木守の脚本集を買った時より前のような気もするのだが、本の題を知ったのは脚本集の巻末の佐々木守と実相時昭雄の対談でだった。三十年かかってやっと入手できたよ。しかし、サラリーマン時代は古本屋で二千円の本を気にせず平気で買えたのに、今は千五百円でもためらってしまう。切ないなあ。