茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(237)お前は一体何をしているのだ

加藤匡通
十二月××日(日)
年末年始で仕事がなくなると言う日雇派遣的には正しい展開で金で保たないのはわかりきっているので、つーか遊び過ぎて既に現段階で金はないので日曜だが仕事を入れた。焼け石に水だけどな。だから今朝は戦隊もライダーもプリキュアも見れない。戦隊とプリキュアはそろそろ終盤で展開が気になるところだが仕方ない。録画しても多分見ないからしない。この十年で録画してきちんと追いかけることが出来たのは『コードギアス R2』だけだ。
ヘルメットも安全帯もいらないガラ出しと聞いていたが、現場は個人宅、ガラと言うかゴミ出しだった。家主はとうに亡くなっていて、取り壊し前に遺品をゴミとして出すのだとか。話を持ってきたのはゼネコンで、まあいろんな経緯があって引き受けたらしく、僕たち末端の作業員は正式にはこの仕事がどこの仕事なのかも聞いていない。だから作業終了時の伝票もなしだ。介護用ベッドや冷蔵庫が大物だが後は面倒くさい大きい物も重い物はない。梱包もほどいてない姿見なんかも出て来た。僕らにはただのゴミにしか見えない物が、見る人が見れば宝の山なのはゴミ回収の仕事で経験済み、と言うか今日の仕事はゴミ回収でやった遺品整理と全く同じである。道が狭いので二トン車しか入れないからその分車の台数は増えるが、一日かかるような量ではない。朝イチで終わり仕舞いと言われもしたのでその気になった。目の前には銭湯があるけど、開くまでここにはいないだろうな。八時半に一台目が来て積み込み、二台目ももう来ていると言う。よしじゃあやりますか!
しかし次の積み込みは十二時過ぎとなった。庭先に持ち主不明の荷物があって、取りあえず手をつけずにいたが、持ち主が現れたのだ。家主の許可を得て置いてあるが、ゴミ出しをしているのを知って来たようだ。しかし荷物を今日動かすのは無理だと話がこじれ、警察を呼ぶ騒ぎになった。それで九時過ぎから延々待機。コンビニのイートインでこの間サボっていた作業をして過ごしたから、それはいいけど。次は一時、その次は十二時の便が折り返して来て四時近かった。その間はまた待機だ。楽な現場ではある。
件の荷物は持ち主が多少回収していった。残りはゴミとして四台目に積み込んだ。持ち主はどうも野宿者だったらしい。家主との間でどのような話になったのかは知らないが、野宿者の荷物を撤去、処分する側になってしまった。上がったのは四時半で、現場の人間は口々に「あの親父のせいでこんな時間までかかった」と言っているがとても同調する気にはなれない。俺は一体何をしているのだ!
路地を隔てた真正面にある銭湯はもう開いている。マンションの一階に入っているタイプの銭湯だ。湯桶や水音が響き、お湯のいい匂いがしているが、これから帰って明日まくビラ(組合とは別件)を印刷しなければならない。銭湯を横目に駅へと急いだ。