茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(522)置いてきぼり

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(522)置いてきぼり

加藤匡通

二月××日(木)

 先日から入っている現場は前にも書いた通り応援で、この会社は前にも学校関係で入っている。V社からは僕ともう一人来ているが、もう一人の方は最近ずっとこの会社の応援に入っている。

 ここの社長はいい人なんだがかなりせっかちである。V社の社長に爪の垢を煎じて飲ませた方がいい、ともう一人の応援と話しているが、せっかく飲んで多少いいひとになってもせっかちが倍加して台無しになりそうだからやめよう、と結論、計画は取り止めた。

 作業の空調は以前と同じだが、今回はダクト配管の取り付けだ。ダクトは薄いながらも金属製、他の機器も含めて高所作業車での作業で天井から吊り下げる。図面を見ながら天井に墨を出し、適切な位置にアンカーがあればそれを使い、なければハンマ-ドリルで穴を開け、アンカーを打ち込み、全ネジを差し込む。そこまでやってやっと器具ないしダクトの取り付けになる。この作業をV社の二人でやっている。二人ともV社では職人ではないが、僕はもう一人の手元に近い。つまり一人では何も出来ない。

 この現場に来て二日目のこと。社長は一人で、僕はV社のもう一人と動いていた。昼前に社長が言った。「午後から別の現場に行くから。加藤さんはここに残って。」当然僕に拒否権はない。大丈夫だよねとか言ってるが、大丈夫な訳ないだろ。

 午後はダクトの吊り下げだった。空調に監督に「すいません、この作業初めてなんですけど。」と謝りながらやり方を教えてもらっった。「あの社長もしょうがねえなあ。」と苦笑している。どうにかこうにか作業をしたものの、我ながらものすごく遅い。午後丸々使ってどうにか短いのを一本だけ。お話にならない。

 数日経つと、朝九時過ぎには社長たちは別の現場に行くようになった。作業そのものはダクトの吊り下げそのものから、空気漏れを防ぐため継ぎ目にシール材を塗ってその上からテープを巻く簡単なものに変わっていたが、だからと言って置いてきぼりはいかがなものかと。

 帰りに沿線の古本屋に寄ってみた。ネットの書き込みには「店主に態度が悪い。」とあったが、数冊の本を持って会計しながら話をするとなんの問題もない。単に安い本を探そうとしてるだけなら店主も気持ちよくはないだろうさ。棚に『香山滋全集』が並んでいたので聞いてみた。「あれ、売れそうですか?」「いやあ、売れないんじゃないかなあ。」四万五千円なので今の僕にはちと手が出せない。バブルは弾けた。買えるといいなあ。もっとも、買っても読めるかどうか。好きな小説家だけれども、いろんな理由から優先順位はどんどん下がっている。

 そして翌週。最早朝、社長たちは顔すら出さない。おい!