茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(117)羞恥プレーと『妖精作戦』

加藤匡通
九月×日(金)
  珍しく都内二十三区西部の現場だ。しかも駅前で人通りが多い。この季節は薄着で露出度の高い女性が多く、嬉しいと言うか悩ましいと言うか、鼻の下を伸ばしている。いやこれはいやらしい中年だか頭の中はいまだ煩悩溢れる高校生と言ったアピールしようとしている訳ではなくて、住んでいた頃はなんとも思わなかったが、やっぱり人が多いよ東京。今住んでいる駅から十分のところも人通りなんかほぼないが、それでも住宅地の一角なので人は見かける。自営時代に住んでいたのは狸穴と書いてまみあなと読む名前からしてそのままのところで、昔からの集落と新興住宅地がはっきりと分かれていた。うちはその昔からの集落と新興の住宅地の真ん中にあって周りは畑、隣近所と顔を合わせることのある方が少ない。買い物へでも出るなら別だが一日に見かける人は会社の従業員が最大四人、作業現場の個人宅の一人二人が会話のある相手。他に家の前を朝夕学校に通う小学生から高校生までの子ども達を二十人くらい。一日に見る人はこんなくらいで、特に同世代あるいは若い女性なぞ見る機会がないのだ!あれ?また中年だか高校生ぶりをアピールし始めたぞ。話題を変えよう。
  今日の現場は先行工事、仮囲いがあるだけのなにもないところにブロックを積むだけだ。まずは重機で掘削である。一メートル掘ったりするので結構な量の土が出る。ブロックを積んだあとに埋め戻し分が必要だろうとダンプで一回だけ土を捨てに行き、残りは敷地の真ん中あたりに山にしておく。
  本体基礎工事が始まれば仮説トイレが入って来るが、先行工事なので当然トイレはまだない。なので持ち運び出来る仮説トイレを持って来ている。外溝工事は仮説トイレ(イベント会場なんかにある長方形のあれだ)が撤去されてから入ることも多く、これはよく使う。四角いポリタンクに上に乗せるだけの小便器、その周りを隠すための組立式の仮囲いで出来ている。大便は公園のトイレを使うかコンビニのトイレを借りるしかない。公園のは汚いのでみんなコンビニを使いたがる。問題は設置場所だ。敷地は四角く、ブロックを積むのに邪魔なので仮囲いは半分外してある。つまり四辺のうちニ辺は開けっぴろげ、目隠しとなるブロックはこれから積む。もちろん作業にも邪魔なのでそちらには置けない。ちなみにブロック積みの目の前はコインパークで通り抜けたりする人は多い。仮囲いが残っている側は人通りが多く、しかも仮囲いは上半分が目の大きな網目なのでトイレを設置したいところではない。肝心の部分は仮囲いで隠れるけど通行人から何をしているか丸分かりだからだ。でも他に置けそうなところはないなあ。幸い通行人は見て見ぬ振りをしてくれる。しかしなあ、これじゃ羞恥プレーだよ。繰り返すけど、一メートルニメートル隣を女性が歩いてるんだぜ?
  帰りに立ち寄った本屋で笹本祐一の『妖精作戦』が復刊されているのを発見、買ってしまう。リアルタイムで読んでいるが、あれからもう二十七年も経ちますか。学習会だので読まなきゃいけない本が何冊もあるがそれらをすっ飛ばして読み始めた。四冊とも復刊するらしい。何度も読み返しているが、また最後に突き落とされるのだろう。