茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(133) 『おじいさんと草原の小学校』

加藤匡通
十一月××日(日)
「マウマウ団の反乱」は高校の世界史の教科書で見た覚えはあるんだが、宗教的反乱とあったと思う。そのマウマウ団の蜂起に関係する映画がシネプレックスつくばで上映されていたので見に行った。マウマウの蜂起は植民者であるイギリス軍に鎮圧され生き残った者は収容所に入れられた。マウマウの蜂起がきっかけになって独立運動が盛んになりケニアは独立を果たす。ケニア政府は部族ではなくケニア人としての国民統合を目指すが、マウマウの蜂起には部族主義的な面もあり道のりは長い。映画はマウマウの生き残りの男性が八十四才で小学校に入ろうとするところから始まる。
ほとんど知らないことばかりで大変興味深かった。この映画を見ている限り、宗教的反乱には見えない。教科書は直接この国とは関わらないことでも正しいとは限らない。知らない、は言い訳で知ろうとしないが正しいのかもしれない。終盤の小さな暴動は痛快だし感動的ですらある。映画に出て来るイギリス人はマウマウの蜂起を鎮圧する兵士だけで、ほとんどその他大勢扱いでしかないが、それでもこの映画はケニア映画ではなくイギリス映画なのだった。いろいろ考えさせられるなあ。イギリスはひどいけどこの国よりはまだましかもしれないと思っちまった。能天気過ぎる感想だとは自分でも思うが、この国で自国の植民地についてのこんな映画、作れるとは思えないもんなあ。
  さて、この映画は都内では岩波ホールで上映された。うかつなことにパンフ買って気付き、改めて驚いた。岩波ホールと言えば岩波ホールである。岩波の権威にひれ伏すつもりもないのだが、ミニシアターの草分けはまだ健在だ。シネマスクエアとうきゅうはすっかり格が落ち、シネセゾン渋谷は流浪の果てにこの二月、シネヴィトヴァン六本木はとうの昔に閉館と短館公開を堅持しようとするミニシアターには冬の時代だが最古参がまだ平気な顔で現役とは素晴らしい。しかし岩波ホールでかかっていた映画がシネコンで上映されるとは,なんというか頭がクラクラする事態だ。しかもブルーレイでの上映!確かにフィルムを焼く経費を考えれば圧倒的に安かろう。でもブルーレイは映画館の大画面には耐えられる画質ではないよ?黒いところ、つまり影の部分は潰れ、モニターで見かけるのと同じちらつきが画面を走るのを映画館で見ると勘弁してくれと思う。これまでは上映される機会のなかった地方でいい映画が上映されるのは歓迎すべきことだけどもブルーレイですか。
気が付けばシネコンで上映される映画は最早フィルムよりDLPが多くなっている。地方だけでなく都心部シネコンも同様だという。デジタルレーザープリントは安いしかさばらないしゴミにもならないしと、経済合理性を追求するとそうなるのだろう。発色や空気感といった点でフィルムにはかなわないと思うが、フィルムの映画はやがて遺物となるのだろうか。切ないなあ。それともこれもデジタル化に対応できないおっさんの嘆き?