茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(291)転職を後悔する理由

加藤匡通
十ニ月×日(月)
新しい仕事は十時三時の休憩もなく、昼休みも一時間ない。同じ工事現場でもこうも違うのかと驚いている。最初の二日は休みがないのがきつくてとても続かないと思ったが、どうにか慣れつつある。
この時期に転職を決めて失敗したと延々後悔している。僕は後ろ向きのぐずぐずした性格なのだ(そんなところで胸を張るな。)。日払いではないので年末に向けていろいろと金が必要な時期に丸ひと月金が入って来ないと言うのも一つ。もう一つは、新宿歌舞伎町にあるシネマミラノの閉館に立ち会えないことだ。
歌舞伎町には数年前まで映画館がひしめいていた。噴水公園を取り巻く形で四方に映画館があったがいつの間にやら四方が三方になり、しかしそれでも○八年初頭で十館はあった。ところが新宿にも現れたシネコンとデジタル化によって○八年から凄い勢いで映画館が減り出し、最後に残った新宿東急会館が年内で閉館、中に入っているシネマミラノも年内で閉館となる。コマ劇場跡に東宝シネコンが出来るのは来年三月なので一時的に歌舞伎町から映画館がゼロになる。いや、信じられない事態だよ。夏に近くの現場に入り、その帰りに前を通って看板に閉館の文字を確認した時には泣きたくなった。新宿東急文化会館にはシネマミラノが1〜4まで入っていて、僕は現在シネマミラノ1と呼ばれている劇場がミラノ座だった時代の方が馴染み深い。とは言え、八十年代からの通っていたがミラノ座そのものには末期の東京ファンタくらいでしか行っていない。同じ東急系の映画館なら渋谷バンテオンの方が圧倒的に馴染み深いのだ。これは自宅からの距離の問題だったのだが、後年ミラノ座に行ってスクリーンもミラノ座の方が小さかったのでバンテオンで良かったんだと再確認した。ミラノ座の方が収容人員は多いが劇場が縦長なのでスクリーンはバンテオンに比べると遥かに小さい。客席は横長の方がスクリーンは大きくなるからだ。このシネマミラノ1が閉館することによって国内に客席が千を越える映画館は全滅したことになる。
   新宿東急文化会館の中で僕がよく通っていたのはシネマスクエアとうきゅうと名画座ミラノのニ館で、シネスク(と略していた。他の人がどう略していたかは知らない。)はミニシアターの先駆けとして最初は芸術的な映画を、東急レクリエーションが渋谷でル・シネマを始めてからは芸術的と言うよりはマニアックな映画を上映していた。『ありふれた事件』が強烈に印象に残っている。名画座ミラノは八十七年にはシネマミラノと名を変えたが僕の中では名画座ミラノのままだ。多分新宿東急文化会館の中で一番通ったのはここで、僕の年齢なら本来劇場で見れないはずの『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』と言った三十年代ユニバーサル・ホラーや『大アマゾンの半魚人』『宇宙水爆戦』『禁断の惑星』と言った五十年代米SFをリバイバルで見たのはここだし、『ナイトメア・ビフォア・ザ・クリスマス』を見たのもここだ。映画館が消えて行くのはある程度仕方ないとは言え、今年はひどい。都内から消えるのはこれで何館目だ。
二十日から三十一日までミラノ座を復活させた閉館イベントの上映がある。『男たちの挽歌』『夏エヴァ』『スワロウテイル』なんかはまた見たいし『銀河鉄道999』は劇場で見てみたい。『時をかける少女』と『探偵物語』のニ本立の再現や『インファナル・アフェア』三部作プラスハリウッドリメイクの四本立もいい。しかもほぼフィルム上映!都内に通ってたら仕事帰りに寄れたのに、県内で仕事じゃどれか一本でも行けるかどうか。ああ、なんでこの時期に転職しちゃってんだろう!