茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(283)這いつくばって生きてます

加藤匡通
十月××日(木)
   都心繁華街の、表から見ると仕上がっているようにしか見えないビルの新築に来ている。ゼネコン一次で派遣会社、僕たちは多能工らしい。
  会社から昨日あった手配の電話では穴掘りと言われた。「加藤さんお待ちかねの」と言わんばかりだったが、僕はあまり乗り気ではない。この現場にはこのニヶ月で何度も来ていて、先々週も二日入っている。その時は台風直後の最終クリーニングでずっとウエスを手にしていたが、雨で躯体から水が沁みてくるので補修しないと駄目だと話していた。一階の床とボードが濡れていてわかったのだが、もう引き渡しなのにこれはかなりまずい事態である。躯体の継ぎ目からだろうと言うことで地面の数十センチ下にある継ぎ目を補修すると言っていた。今回の穴掘りはその補修のためのもので、狭くて配管があるところを掘らなきゃならないとわかっている。都心のビルは敷地いっぱいに建てるから隣の建物に背中を預けながら、それどころかスコップが入らない空間を六十センチ掘るらしい。いやそれはちょっと喜べと言われても。最終クリーニングも終わってるからもう呼ばれないと思ってたんだが、この前のはつりと言いそう言う仕事こそ回ってくるみたいだな。おまけに今日は雨!外構屋なら掘らないよ。けど最終引き渡しまで数日、中止になんかなる筈もなく、長靴に合羽でスコップを握っている。少し掘ったら這いつくばって配管の下にバールを突っ込んで土を掻き出す作業が、気分的には中心だ。スコップを使う時間も短く穴掘りの楽しさは薄い。合羽は泥だらけ、気温は急に下がって十二月並みと言っているが熱がこもるので休憩のたびに上半身はTシャツ一枚になっている。まあでもY社での穴掘りに比べりゃラクなものだ。
  繁華街の駅前、思い切り表通りで人並みは途切れることがない。前にクリーニングしてた時は玄関の泥落とし用金物を這いつくばって磨いていた。僕の目の前には三角のカラーコーン、その向こうには人々の足、足、足。鼻の下を伸ばしてミニスカートを眺める余裕もなく(手が遅いから。出来る人なら眺める余裕がある。)作業をしていると隣で同じく金物を磨いている同僚が「カラーコーンの向こうには秋の○○の街を満喫する人々、コーンのこちら側には地に這いつくばって働く私たち」と話かけてきた。「勤労意欲なくすなあ。」「元からないでしょうに。」ええ、その通りでございます〜。