茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(338)想定外の残業

加藤匡通
三月××日(金)
  自分の都合で好き勝手にバシバシ休むからなのか、長期に渡って安定した人間関係を築けないと思われているのか、過激派だとばれてるのかわからないが、このところ現場を毎日変わっている。同じ現場で職長をしていたのは遠い昔、一昨年までは一月いた現場もあったが今では一週間同じ現場に続けて入ることも珍しく感じるようになっている。単発穴埋め要員だな。まあ、嫌いじゃないからいいや。固定現場は同じ作業が続くし、半分は養生・クリーニングだ。養生・クリーニングで固定なんて耐えられない。それに半日で早上がりなんてあり得ない。
  去年から何度も来ている都心部の現場に呼ばれた。最初は養生・クリーニング屋のN社として入り、既存の建物を壊して新しく建てる際の地盤処理みたいな作業をしたのを手始めに、はつり屋の合番だのコンクリ打設だのと土工仕事を引き受け、いつの間にやら職長になっていた。もちろん本体がいなかったからだが、たまたま職長会を整備していた時期だったのでスポット扱いなのに職長会のヘルメットまで用意されてしまった。これは人生で初めての事態である。しかしそんなもん長続きするはずもなく、一週間と経たずに現場は移動、次にその現場に呼ばれた時はN社は撤退、同じく養生・クリーニング屋のR社が入っていた。けどやっぱり本体はいなくて全員派遣だ。職長は僕のように出鱈目に出勤するいい加減な奴ではなくしっかりした中堅どころに変わっていた。うん、これから継続で入るのならその方がいい。しかしここまで劇的な変わり方は初めてで、とても笑えるよ。現職長からは「加藤さんの職長メットありますよ。被りますか?」と聞かれた。被るか、んなもん! 監督に「ただいま」と挨拶したら「あれ?加藤さん?社なの?」。「俺日雇派遣だから。」。別の監督も不思議そうな顔で僕を見ている。いや、だから俺は日雇派遣だから。一通り終わったはずなのでいるとは思わなかった、合番していたはつり屋も不思議そうな顔をしている(いるとは思わなかったのは向こうの方も一緒だろうけどさ。)。だから、俺は、日雇派遣なんだってば。「えー、でも、そんなのあり?」確かに。
  それがしばらく前の話。その後来たらば二人予定だったのに職長が休みでガラスのクリーニングをさせられて往生したけどそれはいいや。問題は今日である。昨日今日と監督について僕一人が雑工、他の七、八名は養生・クリーニングをしている。今日は上の階で耐火被覆の吹き付けをしていて、その屑が下まで落ちない様にと三階外周に沿った床の穴を塞ぐために幕板を切っていた。穴は人一人が落ちる程ではないが踏み抜けば大怪我にはなる。言われたのはその穴を急ぎの仕事だからと職長とプラ段で塞いで休憩に入った直後で、「なら初めからきちんと考えろよ!」と噛みつきながらも電ノコで切り初めた。切ったら鳶が幕板を板線で縛ってとめることになっていて鳶は穴の長さも測ってメモを残してくれている。測ったりする細かい仕事は苦手なのでこれはありがたい。急ぎ、なので十時の一服を取らずに作業、昼までにどうにか切り終え一時から片付けをして道具も元の位置に戻したら監督から電話があった。穴埋めの範囲を拡げやがった。「どうして全部片付けてから言うんだよ!俺君に何か悪いことしたか?」「加藤さんごめんなさい、お願いします。ごめんなさい、お願いします。」はいはい、ワタクシの日頃の行いが悪いんですよねええきっとそうですよね。職長が通りかかって「あれ?終わったんじゃないんですか?」「追加が出ました。賽の河原です。」と答えたら、賽の河原がわからなかったらしい。おう、こんなことにもジェネレーション・ギャップか。二時に終わらせて監督に次は何かと聞いた。十時を取ってないし、頼まれていた細かい仕事は合間にこなしていたのですぐやる必要のあるものはなかったらしく、三時半まで休んでいいと言われた。僕のいた休憩場所は午後は会議に使うと聞いていたので近くの連鎖店に入ってコーヒーを飲みながら本を読む。
   戻ると職長が監督に「加藤さん返して。ガラスクリーニング追いつかない。」。え、ク、クリーニング?職長欠勤時の悪夢が甦る。「大丈夫ですよ。加藤さんにはパイオランで養生してもらうだけだから。」本当に簡単だった。ガラス屋がガラスを入れる前に一人がクリーニングをして、ガラスが入ったらまたクリーニングして隙間をテープで塞ぐ、僕はその塞ぐ方。二人だとガラス屋が取り付け作業をしている時間は手が空くけど、一人だと全くガラス屋に追いつけない。なんでテープを貼るのかと言うと外から水が入ったり埃が入るのを防ぐためで、本当はそんな隙間が出来ない状態でガラスを入れればいいんだから、多分ガラスを取り付けるのがまだ早いのだ。僕はテープを貼るだけだからラクではあるが、ガラス屋が終わるまで作業出来ない。クリーニングをしている相方はガラス屋は五時ぎりぎりまで作業をしないだろうと言っていたが、当てが外れガラス屋は五時まで作業を引っ張った。当然僕たちはそれから作業、終わったら五時半近かった。R社として来ている人間はみんな先に帰ってた。・・・あ、あれ?なんでこんなことに?
   だいたいこの現場、前の社の時から僕一人だけ三十分残業ってパターン多いんだけど、なんで?僕の時間配分が駄目なのか?今回も?