茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(社員?)(541)製本作業

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(社員?)(541)製本作業
加藤匡通
十二月××日(金)
 気が付いたら「このマンガがすごい!2023 オンナ編」の一位に『天幕のジャードゥーガル』が入っててびっくりした。去年くらいから世界帝国モンゴルをあつかった漫画が続いていて何事かと思っていたが、まさかこんなに目立つところにまで出てくるとは。
 中国侵攻時のチベットの僧院を舞台にしたBL(!)『月と銀のシャングリラ』を描いた蔵西の『ペルシャの幻術師』は既に完結(原作が司馬遼太郎とは言え『週間文春』に連載ってのがまた凄いんだが)、題名からして期待させる『ゾミア』はおそらく打ち切りで三巻で終了、現在進行形なのは『墨攻』を描いた森秀樹の『ビジャの女王』(インド墨家?)と『天幕のジャードゥーガル』だけとは言え、是非このまま続いて欲しい。『天幕のジャードゥーガル』には明確にフェミニズムの視点が入っているのでなおのこと楽しみである。四作ともペルシア系国家が絡むのは(『ゾミア』の他は舞台までペルシア系。)当時の国際情勢からしてそうなるってことなのかな?
    なんで古代ギリシアが舞台の漫画がこんなに少ないのか、とは相変わらず思うものの、まあいいや。 
    建築現場でマンガと言えばわかりやすく描いた手書きの画のことだ。設備の場合はもちろん配管図をわかりやすくしたものになる。管の加工はたいていマンガをもとに行われる。もっともこれは僕のように図面が読めない者の場合で、本職は図面を見ながら・・・いや本職もマンガに起こしてるな。図面に寸法を書き込んで行くと見づらくなるし、管が重なってたりするとパッと見てわからない。
    マンガの元になる図面はA1,A4八枚分の大きさで新聞紙一枚より大きい。そのままだと破いたりしてしまうので、折ったりせずにそのまましまえる図面ケースに入れる。図面ケースは透明な柔らかいプラスティック製だ。数か月使っていると劣化して穴が開いたりするものの、そのまま図面も見れるし何ならケースの上から印をつけたり文字を書いたりも出来る上に多少の雨なら問題なく使える、実に便利な道具である。
 だが現場の図面は一枚では済まないことが多い。今の現場は一階分で配管図が最低八枚必要で、図面ケースに裏表一枚ずつ入れてもケースが四枚必要になる。こうなるとちょっと面倒になってくる。図面をしまっている場所が共用だと自分が使っている図面がどれか探す手間も出てくる。そうするとどうするかと言うと、図面を製本するのだ。
 現場事務所には配管図のみならず様々な種類の図面が製本されて並んでいたりする。こう言う場合はたいてい表紙と背表紙がついている。図面そのままだとすぐ破けるし、棚にしまったり引き出したりにも耐えられないから補強として簡単な表紙が付くのだ。考えてみたら表紙の本来の機能はそれだな。多分製本屋がやっている。だが職人が使う図面は職人が自分で糊やテープで製本するのだ。
 しばらく前に、職人と手元の僕の二人は四階の作業に目途がついたので作業場所が五階に移った。職人からすればまだ八割終わってないから早いそうだが、とにかく道具も材料も階段で運び上げた。五階の図面ももらった。五階は図面一枚分小さいので七枚の図面で足りる。職人はそれを見てしばらく考えてから「加藤さん、これ製本しといて。」。
 製本なんて今は亡き都立明正高校図書館での文化祭の体験教室以来である。あ、いや、運動関係の冊子のホチキス留めも製本か。
 図面をページが合うように裏同士で貼り合わせるだけの製本だが、よれたり歪んだりすると見づらくなる。材料は手持ちの糊と養生テープだけ、なのに糊はすぐなくなり貼り合わせは養生テープメインになる。この図面余白がないから各辺にテープ貼れないじゃん!いやそれより詰所ならともかく現場でこの作業って、まっすぐ貼れないじゃん!
 かくして三十数年、いや四十年振りに近い製本作業はパッとしない出来栄えに終わった。「そんな丁寧なの求めてないから。」そう言われても嬉しくないですけど!

 なお、まったく本文とは関係ないことだが、日雇派遣には製本専門の会社があったりする。