茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(475)『悪魔の墓場』

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(475)『悪魔の墓場』

加藤匡通
九月×日(火)

 日差しが強く、まだまだ夏だと思う暑さの中、スリーブの墨出しをしている。もちろん僕が図面を見ながら墨出しをしているのではない。職人が出した墨を追っかけて「ここにスリーブが入る」という記号だか図だかを書いているだけ、だれでも出来る作業だ。

 今通っている現場は千葉である。時間的には都内の現場に通うのと変わりはない。仕事を終えてから都内に用があって移動すると、結構な時間と金がかかるが、まあ仕方ない。

 今夜は映画を見に大森まで出た。もうこうなると二十三区を完全に横断している。全部座って来れるけど、何やってるかね、とは自分でも思うよ。特に今夜の場合映画が『悪魔の墓場』なのでその感は強い。

 ロメロのリビング・デッドのパクリというか早い段階での二番煎じ、こんな言い方はどうかとも思うが大した映画ではない。小学生の時に12チャンネルの木曜洋画劇場で見た。八十年代後半に東京ファンタの関連で上映していたと思うが劇場で見たことはなかった。まさか今頃改めて劇場でかかるとは。大した映画ではないと思うものの、そりゃ見たくもなるさ。死体が動く理由をちゃんと考えてある程度段取りを踏んでいたり、そもそも死体が動き出していることをほとんど誰も理解していなかったりするところが、ゾンビがまだ全く認識されていない時代だとうかがわせる。メイクもまだまだだったりするものの、誰も助からない正統派のゾンビ映画を堪能した。

 もしかしたら満席で入れないんじゃないかと冷や冷やして映画館に問い合わせの電話をしたが、大丈夫だった。カード持ってないからネットで券を買えないのだ。それでもカードなんか持つもんじゃないと思っている。作ろうと思えばもう作れるとは思うんだが。自己破産から何年経ったっけ?

 同じ特集でかかった『血ぬられた墓標』なんか絶対当日券じゃ入れないと思ってたのに入れて拍子抜けした。こっちなんか多分劇場でかかるのは五十年振りとかじゃないかと思う。まさか映画館で見る機会があるとは思わなかった。中学の頃から見たかった、髑髏の空洞から浮かび上がってくる眼を堪能した。マリオ・バーバもっと映画館で見てえ。

 

コロナ状況下で働く人の権利 学習・相談会

コロナ状況下で働く人の権利   学習・相談会
またやります!
日時 2020年9月13日(日) 13時30分~16時30分
場所 茨城県 県南生涯学習センター 小講座室1(土浦市大和町9-1ウララビル5階             JR常磐線土浦駅西口から徒歩1分 ペデストリアンデッキで駅から直結)
 
13時30分~ コロナ状況下で働く人の権利   学習会 講師 加藤匡通(茨城不安定労働組合 執行委員長)
14時30分~ コロナ状況下で働く人の権利   相談会
参加費 無料
 
主催 茨城不安定労働組合
連絡先 090-8441-1457(加藤)
 

学習会と相談会の二本立!
 
 新型コロナウイルスの影響で解雇されたり、給料が下がったり、大変なことになっている人は多いでしょう。どこに相談すればいいのか迷っていませんか?どうすれば問題を解決できるかわからず、一人で悩んでいませんか?
  コロナの影響で困った時、どんな制度が使えるのか、どこに相談に行けばいいのかを伝える学習会を、午後1時30分からします。
  そのあと、会社とのトラブルやコロナの影響で困っていることへの相談会を、午後2時30分からします。

  もちろんコロナに関係のない会社とのトラブルも相談できます。寮を追いだされそうだ、パワハラされている…何でも相談してください!

茨城不安定労働組合は、非正規労働者を中心とした、誰でも入れる労働組合です。相談に来た方と共に問題を解決していきます。労働組合とは働く人の問題を、働く人自身が解決するための集まりです。法律でも守られていて、働く人が経営者と直接話し合い問題を解決することができます。
・学習・相談会では感染防止策をとります。
・なお、感染症の拡大状況によっては会場使用ができない場合もあり得ます。詳しくは連絡先電話までお問い合わせください。
 

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(474)ロングスパンから流れる音楽

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(474)ロングスパンから流れる音楽
加藤匡通
八月××日(月)
 八月はどうにかそこそこ仕事があった。とは言え三ヶ月仕事が減っていたダメージから簡単に回復出来るはずもない。さてどうしたものか。
 三階建て以上の現場には大抵工事用の、ロングスパンとかフィアットと呼ばれるエレベーターがついている。階段で資材をいちいち人力で揚げるのは大変だし、高い建物であればあるほど人員輸送にもエレベーターは必要になる。大きさも様々、小さい物は人一人も乗れない荷物専用だが大きい物は四十人五十人が乗れるし、オペレーターがいたりいなかったり、使用には制限があったりなかったりといろいろである。僕が今通っている現場は三階建てだがエレベーターがついている。専属オペレーターはなし、十人程度が乗れる小さな物だ。一ヶ月以上空けて戻って来たらエレベーターがついていてちょっとびっくりした。
 このエレベーターには作動中に音楽の流れるタイプがある。エレベーターが稼働中だから注意しろ、の音楽だ。工事中の足場に取り付けられているので、なんと言うか隙間だらけである。ちょっと手を出しただけでエレベーターと足場の間に挟んで指や手を落としかねない。

 この現場のロングスパンなんか、一階部分に扉がない。エレベーターが一階に停まっていれば扉が開いていたり閉まっていたりするが、エレベーターが上昇したら扉がないから開きっぱなし。上にはエレベーターがあるのにその真下に入れるのだ!おいおい大丈夫か急に動き出したり物を落としたりしたらどうするんだ!こんなの初めてだよ。だから、今動いていると知らせるために音楽を流している。いやこの場合音楽じゃなく他の対策しろって気が強くするが。
 エレベーターの作動音には色々な曲が使われているのでいろんな曲が流れているのを聞いたはずだが、ほとんど覚えていない。そもそも音楽をあまり関心がなく聞く習慣もない。テレビやラジオから流れてくる曲を聞いたり、たまたまその場に流れていた曲を聞くくらいしか音楽に接することはない。なのでエレベーターの作動音も覚えていないのだ。何年も前の夏場に常駐してた現場のロングスパンエレベーターの曲がZARDの『負けないで』だったことくらいしか憶えてない。ちなみに今生まれて初めてZARDって表記した。
 さて、今通っている現場のエレベーターである。最初聞き覚えのある曲だが何だろうと首をひねっていた。多分その段階では一部しか聞いていなかったのだろう。しばらくして気づいた。岩崎良美の『タッチ』だ!おお、こんなところで『タッチ』を聞くとは!
 二十代の監督に「この曲知ってる?」と聞いたら知っていて、さらに在日二十年を越える中国人に聞いても知ってた。再放送を結構やってたみたいだ。僕が高校生の時に放送していたアニメの主題歌だが、息が長い。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(473)鍵付き完全個室

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(473)鍵付き完全個室
加藤匡通
八月××日(火)
    都内に出て最近泊まるのはもっぱらネットカフェになった。カプセルホテルが予約なしには泊まれなくなったからだが、鍵付き完全個室が出現して、快適さが格段に上がったのも大きい。風呂に入れないことを除けば、鍵付き完全個室であればネットカフェの方がカプセルホテルより便利で快適と言っていい。価格もほぼ同じ、いやネットカフェの方が安いか。
    一時期、いやもしかすると今もかもしれないが、ネットカフェと競っていたビデオボックスには泊まったことがない。
 と書いていて思ったけど、なんか、鍵付き完全個室って変な言葉だな。鍵のない個室は本当に個室と言えるものなのか?
    飲んでた頃ならどこでも酒の力で眠れたが、今では宿泊環境が良くなってもぐっすりとは眠れなくなっている。もちろんこれはカプセルホテルやネットカフェと言った低額宿泊所についてであって、普通のホテルならそこそこ眠れるのだろう。しかし最近は遠出しても寝るのはバスの中やネットカフェばかりである。
    宿泊すると言うことは、翌日都内に用事がある訳で、しかも大抵の場合その用事とは賃労働である。
 と言うことで今日も眠い目をこすって屋上でスリーブ取り付けをしている。上からの太陽と下からの照り返しですごく暑い。最近は、仕事が少ない時もスリーブ入ればかりなので首から上が二年振りで真っ黒だ。熱中症には睡眠不足はよくないそうだが、知ったことではない。だいたい熱中症警戒アラートとか出したり、気象庁が「ある種の災害」と言うような中で働かせておいて自己管理で熱中症を防げだなんて虫が良すぎる。そんなに危険なら働かせるなよ。休業するなら補償しろ、だ。
 

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(472)またボイド抜きを発見

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(472)またボイド抜きを発見
加藤匡通
八月×日(木)

 都内の小洒落た街中の現場にいる。ようやく完全に夏になったようで、屋上でコンパネの上に立つと上からも下からも実に暑い。顔と首だけは真っ黒になっている。

 屋上でのスリーブ入れは朝一だけで終わり、十時半から下の階に移った。何をするのかと思ったら、職長はハンマーとハンマドリルを用意している。「私ボイド穴開けるから、加藤さんボイド抜いて。」職長は中国人で、実際にはもっと聞き取りずらいのだが、まあこんなことをしゃっべっている。正直、お互いに言ってることの半分はわからないと思っている。三十年以上前から、これは珍しい光景ではない(いや、百年以上前からこういった光景は繰り広げられていたのだと、これを書いていて思い至った。かつてはこれがもっと悲惨な状態で行われていたのだ。)。

 ボイドとは厚手の紙で作られた円筒で、これをコン打ち前の型枠の上に、穴を上にして、つまりボイドを立てた状態で設置しておくと、コンクリ打設後にその円筒だけ空洞になる。その空洞に配管を通すのだ。往々にしてボイドはコンクリに埋まってしまい、ハンマーでいくらひっぱたいても穴が出てこない、ないし見つからないことがある。その時はハンマドリルで穴を斫る。その両方を職長がするから、僕はボイドを取れと言われているのだ。

「ボイドは何で抜くの?」「これ。」職長が渡したのは、細長い金属パイプを縦に二つに割ったようなものだった。パイプは上部に穴が開いていて、その穴には棒が一本通してある。パイプの下部は刃物というか嘴のように尖っている。「ああ、これ!」初めて見たが、これもボイド抜きの道具なのだと一目でわかった。「加藤さんこっちやる?」職長がハンマドリルを指して聞いてくるが、僕にそのつもりはない。「こっちでいい、こっちやる!」 

 二十年以上前に、バール一本渡されてボイド抜きでは苦労している。こんなに道具があったなんて!ボイドはガムテープでふさがれているが、コンクリが薄ければハンマーでガムテープまで破れる。破れればボイドの厚紙の部分にボイド抜きのパイプの下部をあてがい差し込むと、先が尖っているからボイドを奥深くパイプでくわえ込める。そこで上部の棒を持ってパイプを回すとボイドは簡単に抜けるのだ!おお、これは素晴らしい!

 と言う訳で一日ボイド抜きを楽しんだ。ああ、狭山ヶ丘で苦労していた自分に教えてやりたい。

 詰所では学習のために岩波の『世界』を読んでいた。普段は読まない雑誌だ。ところがスーダンイラクの革命、パプアニューギニアブーゲンビリア独立運動の報告まで載っていて驚愕した。いつの間に世界革命運動情報を載せる雑誌になってたんだ?こりゃ毎号立ち読みしないと駄目か?

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(471)制度も役所も使うためにある

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(471)制度も役所も使うためにある
加藤匡通
八月×日(土)

 七月は十三日しか働けなかった。日雇派遣時代、それも設備に移る前だったら本当に干上がっている。今だっていろいろ考えざる得ないレベルだ。

 昨日、何か手はないのかと相談をしに行った。結論として、新型感染症にともなう経済支援策は僕にはほぼ使えないことが判明した。独立自営のための制度のはずの持続化給付金も無理。一人親方の多くは僕と似たようなものだと思われるが、持続化給付金は使えているのだろうか?友人の中には、雑収入の要件が緩和されてどうにかなったと思ったがはねられた者もいる。しかし、一週間前に組合の企画で新型感染症で生活に困った時に使える制度について説明したが、自分に使えるものがないとは実に笑える。

 今回大幅に条件が緩和された社会福祉協議会の緊急小口資金はどうにかなりそうで、申請は本当に簡単だった。会社を廃業した直後に借りた時とは大違いだよ。ただ、もともとは二週間で支給されていたが、件数の増加に事務処理が対応できないらしく、入って来るのは一か月以上後だそうである。その間に仕事が適当にあることを願うよ。

 ちなみのその緊急小口資金、僕のいるつくばみらい市で二百件申しているんだとか。人口五万に満たないつくばみらい市ですらこうなのだから、全部で一体何人が申請するんだか。

 日雇派遣時代の友人によると、緊急事態宣言の時期に仕事がなかった人には六千円支給されていたらしい。休業手当は出ていたのだ。常雇なんだから当然なんだが、有給休暇はまだ寄こさないと言っていたので、労基にタレこんじゃえよと言っといた。いいじゃん、どうせ役員は従業員とは桁が違う報酬もらってるんだし。 

 

コロナ状況下での反戦集会・デモinつくば 

組合員加藤からの投稿です。

 

コロナ状況下での反戦集会・デモinつくば 

8月9日(日) 

集会 14時~ つくば市竹園交流センター ホール(茨城県つくば市竹園3-19-2  つくばエクスプレスつくば駅よりバス竹園三丁目下車)

    報告「これは戦争ではない」藤田康元(大学非常勤講師)

      「安保法制は今どうなっているのか」加藤匡通(日雇労働者

      その後討論 

デモ 16時半~ 会場からつくば駅周辺 

参加費500円 

主催 戦時下の現在を考える講座

連絡先 090-8441-1457(加藤)

mail: under_the_war_regime@yahoo.co.jp

blog: http://inwartimeinibaraki.hatenablog.com/

twitter: https://twitter.com/against_war                

  

 新型コロナウイルスの猛威は、私たちが住むこの国にも及んでいる。私たちは人と人の間に膜を貼り、距離をとっている。政府が出した緊急事態宣言は解除されているものの、街に人は以前のようには戻っていないし、いくつもの店や会社がつぶれている。そして多分私たちは第二波の中にいる。人と人の接触が減り、交流が失われ、集会やデモも激減した。当たり前なのかもしれない。多くの人にとって抗議行動や集会・デモは関りのないものだと思われている。

 だが、ではこの事態の中、社会はどうだったのか。政府はどう動いたのか。この国では緊急事態宣言をめぐって改憲がとなえられ、首相は一連の事態を戦争になぞらえている。では、戦争にまでなぞらえられるコロナ状況下で、自衛隊や米軍が活動時間を短縮したり活動範囲を自粛したりしているだろうか?この間、辺野古の基地建設は続いている。イージス・アショア配備計画は撤回されたが、自民党内からは敵基地攻撃能力の保有は必要との声が上がっている。中印国境では戦闘がおこり、イスラエル軍パレスチナを攻撃している。アフガニスタン、シリア、リビアスーダン、イエメンなど各地の内戦は今も続いている。米軍の介入は続いている。紛争地でのコロナ禍は戦禍によって深刻化している。そんな中、自衛隊護衛艦きりさめは中東地域で情報収集活動を行っている。

 この国の社会に視線を戻せば、様々なところに自粛警察が現れて、人々は互いの監視を強め、自由が消えていく日常がある。「新しい日常」として人々の行動は制限され、生命と健康を盾にされた人々はそれを受け入れてゆく。本物の戦争ではなくとも、戦時は簡単に演出できる。

 もうたくさんだ。世界はリモートワークでは廻らない。人と人とが接触し交流しなければ人間は、社会は成立しない。私たちが黙っていれば戦時を演出したい人々は好きに振る舞うだろう。進行している本物の戦争は継続されるだろう。今こそ、スマホタブレットの中ではなく、街頭で抗議の声を上げよう。

 毎年八月になるとこの国では過去の戦争に対する様々な取り組みが行われ、人々はその季節だけ戦争を思い出し、考える。私たちは今進行中の「戦争」について考え、この先も考え続けたい。そのために二つの報告を聞き、議論をしたい。その後には会場からつくば駅周辺へのデモが待っている。

 

・集会・デモでは感染防止対策をとります。

・参加者はマスクの着用をお願いします。