茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(472)またボイド抜きを発見

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(472)またボイド抜きを発見
加藤匡通
八月×日(木)

 都内の小洒落た街中の現場にいる。ようやく完全に夏になったようで、屋上でコンパネの上に立つと上からも下からも実に暑い。顔と首だけは真っ黒になっている。

 屋上でのスリーブ入れは朝一だけで終わり、十時半から下の階に移った。何をするのかと思ったら、職長はハンマーとハンマドリルを用意している。「私ボイド穴開けるから、加藤さんボイド抜いて。」職長は中国人で、実際にはもっと聞き取りずらいのだが、まあこんなことをしゃっべっている。正直、お互いに言ってることの半分はわからないと思っている。三十年以上前から、これは珍しい光景ではない(いや、百年以上前からこういった光景は繰り広げられていたのだと、これを書いていて思い至った。かつてはこれがもっと悲惨な状態で行われていたのだ。)。

 ボイドとは厚手の紙で作られた円筒で、これをコン打ち前の型枠の上に、穴を上にして、つまりボイドを立てた状態で設置しておくと、コンクリ打設後にその円筒だけ空洞になる。その空洞に配管を通すのだ。往々にしてボイドはコンクリに埋まってしまい、ハンマーでいくらひっぱたいても穴が出てこない、ないし見つからないことがある。その時はハンマドリルで穴を斫る。その両方を職長がするから、僕はボイドを取れと言われているのだ。

「ボイドは何で抜くの?」「これ。」職長が渡したのは、細長い金属パイプを縦に二つに割ったようなものだった。パイプは上部に穴が開いていて、その穴には棒が一本通してある。パイプの下部は刃物というか嘴のように尖っている。「ああ、これ!」初めて見たが、これもボイド抜きの道具なのだと一目でわかった。「加藤さんこっちやる?」職長がハンマドリルを指して聞いてくるが、僕にそのつもりはない。「こっちでいい、こっちやる!」 

 二十年以上前に、バール一本渡されてボイド抜きでは苦労している。こんなに道具があったなんて!ボイドはガムテープでふさがれているが、コンクリが薄ければハンマーでガムテープまで破れる。破れればボイドの厚紙の部分にボイド抜きのパイプの下部をあてがい差し込むと、先が尖っているからボイドを奥深くパイプでくわえ込める。そこで上部の棒を持ってパイプを回すとボイドは簡単に抜けるのだ!おお、これは素晴らしい!

 と言う訳で一日ボイド抜きを楽しんだ。ああ、狭山ヶ丘で苦労していた自分に教えてやりたい。

 詰所では学習のために岩波の『世界』を読んでいた。普段は読まない雑誌だ。ところがスーダンイラクの革命、パプアニューギニアブーゲンビリア独立運動の報告まで載っていて驚愕した。いつの間に世界革命運動情報を載せる雑誌になってたんだ?こりゃ毎号立ち読みしないと駄目か?