茨城不安定労働組合

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日雇い派遣日記(75)『ばかもの』あるいは派遣会社の生き残り方

一月××日(月)

              加藤匡通

 十日の連休に続いて三連休。世間は土曜から三連休なのだろうが僕は日曜から三連休。明日は用事があって休む。現場はリヤカー移動のブロック積みのはずなので大変だろうと思うと申し訳ない気もあるが、まあ仕方ない。ちなみに最近平日休むのはほとんど運動関係の用ではない。ん?これはだれへの言い訳だ?
 一人親方とは言え日雇いだから(矛盾した言葉遣いだが事実である)現場に出なければ金は入って来ない。今日はY社の現場は休み、しかし明日休みの僕は仕事がしたい。夏休みあけ以来で日雇派遣の会社に電話してみた。「加藤さん健康診断受けてましたっけ」へ?実は去年はまったく受けてない。Y社からも言われているがずるずる一年過ぎてしまった。僕が登録している派遣会社は自社で健康診断をやっていて、以前は僕も受けていた。「いや、そちらの健康診断ですよね。受けてないっす。」「うちも色々あって、今健康診断受けてないと現場入れないんですよ。」がちょ〜ん!ああ、そう来ましたか、そんな時代になりましたか。
 一応入れる現場を探してみるということで、七時前にもう一度電話してみた。都内で日雇派遣をしていた頃はだいたい各社とも夕方五時から七時くらいが手配の時間で、この時間帯は電話がつながる場所にいるようにしていた。だから基本的にはこの時間は丁度映画館で夕方の上映が始まる時間だが、この時間の映画は見送っていた。会社によっては電話がつながる順に仕事を手配していたところもあったので(僕が登録していた頃のフルキャストがそうだった。とにかく仕事の枠が埋まっていればいいという考え方で仕事を頼む側にも働く側にも評判は悪い。)、この時間に電話がつながらないと翌日の現場がないこともあったのだ。手配の社員と関係が出来て「今から映画見るからに終わったら確認の電話するわ」と言えるようになったのはかなりあとのことだ。健康診断を受けていなくとも入れる現場はゼロではないがやはり少ないらしく、結局今日の仕事にあぶれちまった。
 おまけに入った映画がリアルなアルコール依存症の話で主人公の言動にいちいち覚えがあっていたたまれない気分になってしまった。この時期アルコール依存症の映画は二本上映されているが僕が見たのは『ばかもの』の方。内田有紀は最近映画では難しい役柄ばかり選んでいるような気がするが、その割にベッドシーンで脱いでないのはどういうことだ?時間が合えばもう一本も見るつもり。
 健康診断を受けていないと現場に入れないのは、スーパーゼネコンの現場に入っているから。現場での安全管理がうるさくなっているのだろう。この派遣会社は以前から健康診断を実施していたし安全大会も自社で行っていた。ゼネコンの一次業者として、派遣という形ではなく仕事を取って来てもいるし、建設業の認可も受けている。建設業界の中で生き残りを本気で考えているのだろう。健康診断の徹底も安全大会の実施も、少々面倒くさいが労働者を守ることにもなる。けして悪いことではない。しかし家がなかったり住所を明かせなかったりといった事情があっても簡単に働けた日雇派遣からハードルの高いものになってしまったのも確かだと思う。これも派遣法改正への対応なんだろうか。ならやっぱり派遣法改正は底辺の労働者に本当に利するものなのかと疑ってしまうよ。そもそも建設業での日雇労働は法律では禁止されているが行政側も黙認してきた。寄せ場の日雇労働は派遣法とは全く関係なく存在してきた。派遣法の改正という時、どこまでが、誰までがその恩恵に与れるのか、保護すべき労働者と捉えられているのか、気になっている。僕は正直言って日雇派遣がな
くなると困る。仕事がなくなった時にすぐに働けるところがなくなるからだ。これは狭い視野での考え方なのか?
健康診断は全て派遣会社持ち、自己負担なしで夜七時半までだという。どうせ都内だし、少し足を延ばして受けて来るか。…これ、Y社の健康診断に使い回し…出来ないよなぁ。