茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(186)財布はレジ袋へ

加藤匡通
十一月××日(木)
  今日は給料日である。資本主義打倒を志しているものの賃金奴隷の身なので給料が出ると嬉しいのだ。(貨幣なんか絶滅してしまえとも思っていると言うのに何と言う矛盾。うぎゃー!)で、仕事が終わったらあれを買おうこれを買おうと浮かれていたのだが、朝駅を下りてコンビニに寄って財布を見て気がついた。カード置いて来た!ああ、本が買えない。電車の切符は回数券で手元にあるものの、あんまり金持ってないから寄り道も出来ないや。昨日もう一つの財布にカードの類を移してたからなあ。
  仕事で持ち歩く財布は、夏は汗で濡れ、冬は砂埃だらけになるのでコンビニでもらう小さ目のレジ袋に入れている。コンビニでこれをやってもあまりぎょっとはされないが(いろんな客が来るんだろう)、初めて見た人は怪訝な顔をする。建設現場で働いていれば夏場は財布自体が濡れてしまい、レシートがくっついて字が読めなくなり、冬場はカードも札も砂だらけになる。そう言ってもなお笑う奴もいるけど、ボード屑や砂でじゃりじゃりになったカードって、せっかく仕事が終わって手を洗っても汚れるし、結構嫌なもんだぜ?日雇派遣だった頃、これは僕だけではなくみんな困っていた。タバコの箱を包んでるビニールに使う分だけ札を挟んでる知恵者がいて、必要以上に金も使わずに済むうまいやり方だと思ったが残念ながら僕はタバコを吸わないのでこの手は使えない。最低限の現金だけポケットに突っ込んで歩ければとは思うが、本に限らず煩悩やら未練やらいろんなモノを溜め込んでしまう習性を反映して財布は無駄に膨れ上がるばかり。財布ごとビニール袋に入れていたのは僕より七つ八つ上の人だった。最初は分からずに「それは何ですか」と聞いたら丁寧に説明され、それはいけると即採用、以来十数年経ってる。
  教えてくれた人は当時三十半ば、その頃の僕は三十過ぎたら日雇派遣から脱却すると公言している二十代の終わりである。そんな僕からするとその歳でなんで日雇派遣を続けているのかと不思議だった。派遣会社に来る仕事は一通り何でも出来て、多分職人経験があったのだと思う。いろいろ教えてももらった。その気になれば日雇派遣でなくとも仕事はあったはずだ。気がついたら僕も同じような歳になり、公言していた脱却など出来ぬまま、多分周囲からは「その気になれば日雇派遣でなくとも仕事はあるだろうに」と思われることになる。僕の場合は好きな時に休めるというメリットが運動をする上で重要だったので抜けられなかったが、その人にはその人なりの事情があったんだろう、と今は思える。三十前の若造には無理だったけどな。