茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(327)ピット三昧

加藤匡通
十一月×日(木)
 月曜は『ジャミラ 朝は近い』を買ったマンション改修現場で廊下床の養生撤去をしていた。始めのうちはどうやれば早く床に敷いてあるシートを剥がしてまとめられるかがわからず時間がかかったがすぐに慣れていいペースで剥がせるようになった。が、やっぱり朝指示されたところまでは辿り着けそうにない。明日も呼ばれてると言うから急がなくてもいいか。そう思ってペースを落としていたら、昼過ぎに派遣会社から電話がかかって来た。あれ?この時間の電話はたいてい現場変更の電話だけどな。「加藤さん、明日現場変更で。」「どこよ?」「酸欠の(資格が)必要なところが出て来たんですよ。他に人がいなくて。」「どこよ?」「以前入ってたところです。詳細はあとで。」何故そこで引き延ばす?
  と言うことで前に来た東京郊外かなり西の改修現場に来ている。また三千円だ。けど今回は交通費は全額出る。遠くて僕が文句を言ったから、だ。こちらから言わなければ交通費はいつも通り千円までは自己負担だったのだろう。人によっては千円以下でも毎回交渉して交通費を出させている者もいると聞いている。そうなると実は基準なんかないのだと言うことになって、ゴネ得あるいはコミュニケーション能力に長けた者、ないし事務所に可愛がられている者がいい目を見ることになる。気持ち悪い話だ。どうしてくれよう?
  夏以来で現場に入ると内装解体はとっくに終わり壁や柱は塗装されボードが貼られきれいに仕上がっている。N社の職人と派遣を合わせて二十人以上の大所帯だったが今回は五人。十年以上前に世話になったN社の解体専属の職長はもう動いていた。こんなにきれいで酸欠作業って何すんだ?今さらピットに入るとも思えないんだが。
  けどやっぱり連れて行かれた先は地下一階にあるピットだった。地上はきれいに仕上がりつつあるが地下はまだまだ。壁も床も柱も天井も全てが解体直後のままだ。ピットは十数ヵ所。覗いてみたら水や泥どころか二十年以上前の改修工事(まさか建設当時のじゃないだろ)の型枠やコア抜きのコアがそのままになっている。本気の清掃ではないらしいので天井に付いたままの型枠やらは無視して床の上の物たけを外に出して、水中ポンプで水を抜き、ポンプで吸いきれない分は塵取りとスポンジで取る。残った泥はガラ袋に入れて水を切ってから捨て、最後に送風機を突っ込んで中を乾かす。書くだけなら簡単だが天井が低いので作業は中腰、ごみや荷物は中と外での受け渡し、ピット内は水びたしなので長靴に合羽にゴム手袋だがそれでも冷たいし水めかは入ってくる。場所によっては溜まっている水はどぶ臭く真っ黒だったりもする。おまけに、入る直前に酸素濃度を計り送風機を回しているものの、酸欠の危険性のある作業だ。こんな作業が楽しいなんて、やっぱり僕はおかしい。いやホントに毎日楽しいことったらない。会社は最初の電話で二日間と言ったが現場で職長に聞いたら短くても丸一週間はあるらしい。素晴らしい!
  現場の最寄駅は土曜や休日ともなれば早朝からこれから山登りに向かうとおぼしき客が増える。僕は穴潜りだ。階級に合わせた行動様式で、昔から下とか底にばかり向かってますから。なんせアンダークラスなもんで。