茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(514)忘年会が罰ゲーム

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(514)忘年会が罰ゲーム
加藤匡通
十二月××日(土)
 会社員時代から忘年会はあまり楽しみではなかった。いや、これは記憶を書き換えているのかもしれない。その頃は酒が飲めれば何事でも大喜びだった可能性は高い。だがまあ上司と飲む酒が旨かったかと言えば、決して旨くはなかったと思う。「職場の飲み会を嫌がる新入社員」が話題になっていた頃のことで、それは自分のことだと思ってもいた。
  月曜に社長から、土曜に忘年会をするから、時間に間に合うように仕事を終わらせて、と言われた。住人のいる工事で自分たちの都合だけで終了時間を決められる訳がない。呆れた。この件に関してはV社の職人は一丸となって呆れている。
  先月からモルタル補修を二人で出来るようになり、残業はほぼなくなった。それでも排水管更新班の方が早く終わっている。補修だけでなく、排水菅更新後の穴埋めもこちらでするようになってきたからだ。排水菅更新班から頼まれたのである。なのにこちらが穴埋めを終えて帰ってくると彼らは着替えも済んで僕たちの顔を見るなり帰っている。酷い時は職長以外全員帰ってたりもする。この穴埋めは君たちの仕事じゃないの?応援してるこっちが終わるまでは待ってるべきなんじゃないの?
  だが昨日から相方が休みなので補修は一人に戻った。月曜は相方が出て僕が休みなのでお互い様だ。その分作業は遅れるので排水菅を更新した後の配管周りの穴埋めは排水菅更新班にお願いした。お願いした?元に戻しただけだと思うけど、まあいいや。
  当然のように補修は遅れだす。今やっている棟は何故か斫り穴が大きくなっていて、モルタルを三分の一も入れていないのにエーパットが剥がれ落ちると言う悪夢が頻発している。エーパットの貼り方を工夫すればどうにかなるのだが、貼っているのは外国人でなかなか言葉が通じず伝わらない。昨日もまた落ちた。落ちたらやり直しで日程が一日遅れる。貼り方を工夫して急結剤を入れても、夏場でもないのに全部モルタルを詰めてエーパットを剥がして補修するなんて危なくて半日では出来ない。これは今日も予定通りにはこなせないか?でもあんまり残しちゃ月曜の相方が大変だしな。 

 社長が昼に顔を出して言った。「加藤さん遅くなるみたいだけど、来てね。」配管班には多分残業だと伝えてある。それを聞いてわざわざ言いに来たらしい。いや、別に忘年会出なくていいんですけど。

 一人でモルタルの入ったバケツを持って脚立の乗り降りを繰り返していたら職長から電話がかかってきた。終わったから先に忘年会に行ってる、だと。何時だと思ったら五時半を過ぎている。この現場の提示は六時だから彼らは一応早上がりだ。こっちはまだ終わんないよ。

 結局ノルマはこなせず、切りのいいとこまでやって片付けたら七時を過ぎていた。忘年会の会場はこの現場の最寄駅から一時間かかる。もちろん僕の帰る方向ではない。九時十時までやってると言ってたし、顔は出すか。休憩時間が半分しかないから現場じゃ本読めないけど、電車で読めるしな。

 会場の中華料理屋に着くと、当然みんな出来上がっている。最初からいたんならともかく、アルコール依存症で酒をやめた人間にとってはあまり気持ちのいいものではない。料理も酒もほとんどない。「加藤さん何食べる?」とメニューを渡される。ん?みんなもう食べないの?何を頼もうかと見ていると、帰り支度をして席を立つ者がいて、社長に停められている。「加藤さんが食べるまで待って。」帰っていい、と口にしたくなるのを堪えて担々麺と餃子を注文する。来た。食べた。食べ終わると社長が「じゃあ帰ろうか。」

 やっぱ俺来なくてよかったんじゃね?つか、これ罰ゲーム?